人工リポソームを用いた膜タンパク質の発現・精製 と構造・機能解析
1.研究の概要とキーワード
レシチンとコレステロールを用いて作製した人工リポソームを使用して膜タンパク質・酵素を膜中に再構成し、そのトポロジー、構造、機能解析を行います。さらに、無細胞タンパク質合成系と組み合わせることにより、tail-anchorドメインを持つ膜貫通型タンパク質を無細胞的に発現・膜中への取込を行わせ、膜中にタンパク質分子を配向させたプロテオリポソームを調製します。この場合、tail-anchor ドメインの持つ自動的膜貫通輸送能を利用します。さらにtail-anchor ドメインのC末端側に適当なタンパク質ドメインを融合させ、その部分がリポ
ソーム内腔側へ取り込まれるという性質を利用します。
2.他の研究との相違点・新規な点
(1)無細胞的に膜タンパク質合成を行うため、大腸菌、酵母、動物培養細胞などでは発現
させるのが困難な膜タンパク質でも容易に発現出来る可能性があります。
(2)膜タンパク質の発現・精製が単純化・迅速化でき、そのため膜タンパク質の構造・機能
解析がプロテオリポソームにおいて直接しかも容易に行えます。
(3)容易に安定同位体置換アミノ酸によるタンパク質の安定同位体ラベルが可能となり、そ
の精製も容易です。
3.内容(当研究室で行っている具体的研究テーマ)
(1)神経内分泌小胞由来シトクロムb561の構造と機能の解析
(2)植物シトクロムb561の構造と機能の解析
(3)シトクロムb5及び関連電子伝達系の構造・機能の解析
(4)膜貫通型タンパク質における電子伝達系の構造・機能解析と生理機構
4.研究の適用分野
適応例
(1)精製した膜貫通型シトクロムb561をリポソーム膜に埋め込み、膜中でのタンパク質の
トポロジーをトリプシンによる特異的加水分解とMALDI-TOF-MS解析により明らかに
しました。
(2)精製した膜貫通型シトクロムb561をリポソーム膜に埋込み、リポソーム内腔中に入れ
たアスコルビン酸に由来する電子を使って、リポソーム外に加えたドーパミンβ水酸
化酵素による神経伝達物質オクトパミンの生合成に成功しました(下図)

シトクロムb561が本来存在するクロマフィン小胞とはちょうど反対向きにリポソーム膜中に埋め込まれていることを利用して、小胞内アスコルビン酸(AsA)に由来する膜貫通電子伝達反応を起
こさせます。
これにより、小胞外側のドーパミンβ水酸化酵素によって触媒されたオクトパミンの生合成に成功し
ました。
研究者 鍔木 基成
神戸大学自然科学研究科
神戸大学連携創造本部より
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- at 2006年12月28日