消化管がん転移を制御するチロシンフォスファターゼシグナルの解析
1.研究の概要とキーワード
転移は消化管がんによる死亡の最大の原因です。従って、がんの克服を前提とした研究では、転移に特異的な生体情報をもたらす分子機構の解明が必要となります。私たちは網羅的遺伝子発現解析から大腸がん肝転移巣で特異的に高発現する遺伝子産物として単離されたチロシンフォスファターゼPRL-3 (phosphatase of regenerating liver-3)の転移能マーカーとしての意義、転移の機構における役割を解析しています。
2.他の研究との相違点・新規な点
PRL-3が関与するシグナル伝達系はいまだ解明されていませんが、細胞膜近傍で作用するチロシンフォスファターゼとして様々な細胞内シグナルを制御する可能性が考えられ、転移という複雑な生命現象を反映する様々な作用分子の同定が期待されます。
これまでに多数の臨床例を用いた検討から、PRL-3を高発現する大腸がん、胃がんは転移能が高い事を明らかにしてきました。また、PRL-3を高発現する大腸がんや胃がん細胞にPRL-3特異的干渉RNA(iRNA)を作用させることにより、がん細胞の試験管内での運動・浸潤能や動物モデルにおける転移能が著明に抑制されることを実験的に証明しました。現在、PRL-3特異的干渉RNA作用後のがん細胞内におけるリン酸化プロテオームプロファイリングを計画中です。
4.研究の適用分野
PRL-3の作用分子の同定とシグナル伝達機構の解明により、がん転移に特異的な生体情報を抽出が可能と考えます。さらに個々の作用分子に対する阻害物質のスクリーニングから、新たながん転移抑制薬を開発することが出来るものと考え研究中です。
研究者 横崎 宏
神戸大学医学・生体情報医学
神戸大学連携創造本部より
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- at 2006年12月27日