経皮的肝灌流化学療法による進行多発肝細胞癌の新治療体系の確立
1.研究の概要とキーワード
進行多発肝細胞癌(HCC)には有効な治療法がなく、中〜長期の生存は絶望視されていました。私達は打開策として患者様の負担が小さい低侵襲性の経皮的肝灌流化学療法(PIHP, Percutaeous Isolated Hepatic Perfusion)を考案し実用化しています。本法は現存する最強の肝局所化学療法であり、他治療ではとても達成できなかった局所制御ができるようになりました。
2.他の研究との相違点・新規な点
従来からHCC多発進行例では肝動脈塞栓術や動注化学療法が姑息的に行われており、奏効率・生存率とも極めて不良でした。こうした現状を打開する目的で神戸大学の肝臓外科チームは肝静脈分離・活性炭濾過を併用する新しい肝動注化学療法を開発しました。その特徴は1.通常の約10倍の高用量抗癌剤を肝局所に投与可能、2.薬剤の全身副作用を大幅に軽減、3.鼠径部1ヶ所の切開によるカテーテル治療のため低侵襲で反復治療が可能の3点です。本法は大がかりで複雑な手術が必要であった以前の肝灌流と比較すると技術的に簡便で侵襲も低く、今までの肝灌流の概念を塗り替える画期的な肝癌治療法です。
3.内容
特殊カテーテル(4-lumen・2-balloon catheter)を大腿静脈から肝臓後部の下大静脈内に進め、抗癌剤の肝動脈内投与に際し、このカテーテルを用い肝静脈を分離します。バルーン間の側孔から肝静脈血を選択的に脱血し、活性炭で吸着濾過した後、全身へ返血します。本法により臨床第I,II相試験ではHCC(stage IVA)に対する奏功率64%,5年生存率20%と1年前後しか生存が期待できなかった進行肝癌の治療成績が著明に向上しています。現在、減量肝切除にPIHPを併用する2段階治療にも取り組んでおり、今後新しい抗癌剤の使用や感受性テストを併用することによりさらに有効率の向上をはかりたいと考えています。
4.研究の適用分野
PIHPのシステムは肝臓のみならず骨盤内領域の癌(子宮や直腸)にも応用できます。さらに薬剤の活性炭吸着濾過率が高率であればPIHPを用いて肝臓内だけでの各種薬物代謝動態を調べることができます。また特殊カテーテルは改良を加えることで静脈系分離をはじめとするあらゆる治療器具への適応が考えられます。
研究者 富永 正寛、岩崎 武、福本 巧、具 英成
神戸大学医学部 肝臓・移植外科
神戸大学連携創造本部より
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- at 2006年12月26日