キーワード

人工リポソームを用いた膜タンパク質の発現・精製 と構造・機能解析

1.研究の概要とキーワード

 レシチンとコレステロールを用いて作製した人工リポソームを使用して膜タンパク質・酵素を膜中に再構成し、そのトポロジー、構造、機能解析を行います。さらに、無細胞タンパク質合成系と組み合わせることにより、tail-anchorドメインを持つ膜貫通型タンパク質を無細胞的に発現・膜中への取込を行わせ、膜中にタンパク質分子を配向させたプロテオリポソームを調製します。この場合、tail-anchor ドメインの持つ自動的膜貫通輸送能を利用します。さらにtail-anchor ドメインのC末端側に適当なタンパク質ドメインを融合させ、その部分がリポ
ソーム内腔側へ取り込まれるという性質を利用します。

2.他の研究との相違点・新規な点

(1)無細胞的に膜タンパク質合成を行うため、大腸菌、酵母、動物培養細胞などでは発現
   させるのが困難な膜タンパク質でも容易に発現出来る可能性があります。
(2)膜タンパク質の発現・精製が単純化・迅速化でき、そのため膜タンパク質の構造・機能
   解析がプロテオリポソームにおいて直接しかも容易に行えます。
(3)容易に安定同位体置換アミノ酸によるタンパク質の安定同位体ラベルが可能となり、そ
   の精製も容易です。

3.内容(当研究室で行っている具体的研究テーマ)

(1)神経内分泌小胞由来シトクロムb561の構造と機能の解析
(2)植物シトクロムb561の構造と機能の解析
(3)シトクロムb5及び関連電子伝達系の構造・機能の解析
(4)膜貫通型タンパク質における電子伝達系の構造・機能解析と生理機構

4.研究の適用分野

 適応例
 (1)精製した膜貫通型シトクロムb561をリポソーム膜に埋め込み、膜中でのタンパク質の
    トポロジーをトリプシンによる特異的加水分解とMALDI-TOF-MS解析により明らかに
    しました。 
 (2)精製した膜貫通型シトクロムb561をリポソーム膜に埋込み、リポソーム内腔中に入れ
    たアスコルビン酸に由来する電子を使って、リポソーム外に加えたドーパミンβ水酸
    化酵素による神経伝達物質オクトパミンの生合成に成功しました(下図)

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シトクロムb561が本来存在するクロマフィン小胞とはちょうど反対向きにリポソーム膜中に埋め込まれていることを利用して、小胞内アスコルビン酸(AsA)に由来する膜貫通電子伝達反応を起
こさせます。
これにより、小胞外側のドーパミンβ水酸化酵素によって触媒されたオクトパミンの生合成に成功し
ました。


研究者  鍔木 基成
神戸大学自然科学研究科
神戸大学連携創造本部より

生物機能分子の構造解析

1.研究の概要とキーワード

  生物機能分子の分光スペクトル(赤外、ラマン、紫外・可視、NMR)を測定し、密度汎関数法によるシミュレーションスペクトルと比較し、実測の分光スペクトルを解析します。
化合物の同定、構造安定性評価、立体配座解析、絶対配置の推定、解離・会合系における混合物成分比の定量、酵素反応機構の解明などの研究を行っています。

2.他の研究との相違点・新規な点

 理論と実験の両面から複数の分光スペクトルを統一的に解釈します。特に、光学活性分子の絶対配置推定および立体配座解析や生物機能分子の溶液状態における構造変化の解析において、密度汎関数法によるシミュレーションを用いる新規な手法です。

3.内容

 生物機能分子の様々な分光スペクトルを測定し、得られたスペクトルを統計処理し、理論計算によるシミュレーションスペクトルと比較し、立体構造と関連付けます。統計処理は統計解析ソフトや自作のプログラム、理論計算は密度汎関数計算ソフトによって行います。
 次に、生物機能を発現する状態(溶液など)における構造変化を分光スペクトルによって同様に解析し、構造と機能の関係を調べます。また、比較的反応速度の遅い化学反応の経時変化スペクトルを測定し、反応中間体を解析することによって、反応機構を統一的に解釈する。化学反応に及ぼす要因を理論的に分離し、それぞれの寄与を考慮して分子設計することにより、生物機能を制御(促進あるいは抑制)することが可能です。(下図)

4.研究の適用分野
 分子分光学、生物物理学、生物有機化学、量子化学、計算機科学、構造生物学。
 食品や医薬品に含まれる機能性分子の分光スペクトル解析や構造安定性評価などの共同研究を希望します。


研究者  大野 隆

神戸大学農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

植物におけるイオンのホメオスタシス、環境応答機構の解析

1.研究の概要とキーワード

 研究室のメインテーマは、植物が成長に必要とする栄養塩を取り込み、代謝し、あるいは、有害物質を排出することで、細胞環境の恒常性を維持するための機構(イオンホメオスタシス)を解析することです。
 キーワード:
  植物細胞、培養細胞、生体膜輸送、液胞、転流、
  無機イオン代謝、リン酸、窒素、pH、塩ストレス、環境適応、オルガネラ分化
 
2.他の研究との相違点・新規な点

 植物の無機イオン代謝機構を、分子・オルガネラレベルで明らかにしています。
 植物細胞やオルガネラを生きたままで単離し、その生理機能を解析する技術を持っています。また、各種イオンを高感度で測定することができる装置をそろえているので、少数細胞やオルガネラレベルでのイオンの変動を追跡することができます。
 モデル植物(シロイヌナズナ)の培養細胞や突然変異体の解析と組み合わせることで、イオンホメオスタシスに関与する各種分子の役割を明らかにしています。

3.内容


植物の生育に重要なイオンホメオスタシスは、細胞内のオルガネラや膜輸送系の働きで維持されています。なかでも植物細胞の体積の大半を占める液胞(赤く染まった部分)の働きが重要です。私の研究室では、植物から細胞を単離し、単離した細胞からさらに液胞をそのままの形で取り出して、イオン恒常性における働きを解析する研究を進めています。
 また、各種イオンの分析には、イオンクロマトグラムを用いており、イオン分析のための新しい手法の検討も行っています。


4.研究の適用分野
 植物生理学、植物栄養学、環境生理学、環境分析など

研究者  三村 徹郎
神戸大学理学部 生物学科
神戸大学連携創造本部より

消化管における生体防御機構及び常在細菌の定着の解明

1.研究の概要とキーワード

 人や動物の消化管には多数の常在細菌が常在し、宿主と共存関係にあります。その中には宿主にとって有用な細菌や逆に健康の維持に不都合な細菌も混在しています。これらの常在細菌が粘膜のどこに定着し、どのような仕組みで制御されているのかについては解っていません。

 また、腸管の粘膜リンパ組織を除いた一般の粘膜からは、従来高分子物質や粒子状物が殆ど吸収されないと考えられてきましたが、実験的に投与された高分子や粒子状物が生体内の循環血中まで取り込まれる、いわゆるパーソープションpersorptionという現象が数多く報告されてきています。

 そこで動物の消化管における常在細菌の定着場所や定着の仕組み、さらには抗原性を有する高分子や粒子状物のパーソープションの仕組みについて研究しています。


2.他の研究との相違点・新規な点
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 従来微生物学的な視点から研究されてきた常在細菌の定着について、本研究では常在細菌に対する宿主側の応答に視点を置いて解明することにより、常在細菌の定着の仕組みを明らかにし,その成果を人や動物の健康に応用することを目的としています。
 また,従来免疫学では消化管から分泌されるIgAを主体とした抗体は遮断抗体として食物抗原の生体内への侵入を防ぐと考えられてきましたが、本研究では逆に食物抗原を生体内の循環血中まで導きいれる役割りを演じていることを明らかしつつあります。
 さらに、上記の2つの現象が上皮細胞のアポトーシスの過程の進行に密接に関連することを解明しつつあり、粘膜免疫の新たな展開に大きく貢献することが期待されます。
 
3.内容
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 腸管の常在細菌の定着はアポトーシスを発現した上皮細胞を中心としており、接着した細菌に対しては、上皮細胞は物理的及び化学的防御によって排除することを明らかにしています。また常在細菌のコロニーの制御に粘膜リンパ組織が深く関わっており、その制御には局所的な上皮細胞の細胞動態等の非特異的生体防御が大
きな役割りを演じていること明らかにしつつあります。

 また、食物由来の抗原分子や粒子状物に対しては、特異抗体と免疫複合体を形成し、Fcγ受容体を介してアポトーシス発現上皮細胞内に取り込まれて全身循環血中までパーソープションされることを明らかにしています。この際,直径が30µmの巨大な粒子も同じ機構でパーソープションされることを明らかにしいます。


4.研究の適用分野

 腸管に入った食物抗原に対して、粘膜以外の組織では経口免疫寛容やバイスタンダーサプレッションが働き,生体が食物アレルギーになるのを防いでいますが、この経口免疫寛容等の維持や調節には腸管からのパーソープションの機構が関与してる可能性が考えられるため、この機構を応用することによってアレルギーの予防や治療に貢献することが予想されます。

 腸管における常在細菌の定着の仕組みを明らかにすることによって、生体にとって有用な常在細菌叢の再構築の可能性への道が開けること等、健康の更なる増進に貢献すると考えられます。


研究者  北川 浩
神戸大学農学部 応用動物学科
神戸大学連携創造本部より

糸状菌におけるhigh throughput RNAi法の開発

1.研究の概要とキーワード

 RNAi法は、dsRNAを介して遺伝子発現の抑制する技術であり、ポストゲノム時代の逆遺伝学的な手法として注目されています。本研究では、多くの種でゲノム情報が明らかとなっている糸状菌においてRNAi法をハイスループットで利用するための技術を開発しています。
 

2.他の研究との相違点・新規な点

 これまで糸状菌では、①コンストラクトの作製に時間がかかる、②実際にサイレンシングを起こしている形質転換体の選抜が容易でない、などの欠点があり有効なRNAi解析系がありませんでした。そこで、我々は、1.ワンステップクローニングによるサイレンシングベクターの構築、2.GFP蛍光を指標としたサイレンシング株の選抜、を可能とするRNAiベクターpSilent-Dualを開発しました。
 

3.内容


4.研究の適用分野

 RNAi法は、特にゲノム配列情報が明らかとなった生物の遺伝子機能を迅速に解析する技術として期待されており、本法により糸状菌においても本格的にRNAiを利用することが可能となりました。

 本系は、糸状菌のゲノムワイドな遺伝子解析への応用のみならず、迅速な遺伝子解析、遺伝子発現抑制を通した、糸状菌での物質生産や新規産業開発への応用、新規ターゲットの発見による効果的な糸状菌防除法の確立等への利用が考えられます。


研究者  中屋敷 均
神戸大学農学部 生物環境制御学科
神戸大学連携創造本部より

いもち病菌の種特異的寄生性分化機構の解析

1.研究の概要とキーワード

 イネ科植物いもち病菌は、イネに寄生するイネ菌、アワに寄生するアワ菌、コムギに寄生するコムギ菌等寄生性を異にする菌群より構成されています(図1)。この寄生性分化がどのようなメカニズムで支配されているかを遺伝学的、分子遺伝学的に検討しています。


2.他の研究との相違点・新規な点

現在の生物学研究のほとんどは、モデル生物のモデル系統を定め、その系統について深く切り込むという方向に進んでいます。本研究は、いもち病菌の集団を集団として見て、その全体像を明らかにしようとするところに特色があります。


3.内容

 アワのみに寄生するアワ菌とコムギのみに寄生するコムギ菌を交配し、雑種第一代80菌系を得ました(図2、3)。これらをコムギ品種に接種して分離分析を行ったところ、この寄生性分化には2つの主働遺伝子が関与していることが明らかとなりました。これらをPwt1、Pwt2と命名しました。現在これら遺伝子のクローニングを試みています。


4.研究の適用分野

 現在の研究は、直接応用に結びつくものではないが、将来作物の抵抗性育種に役立つのではないかと考えています。 


研究者  土佐 幸雄
神戸大学農学部 生物環境制御学科
神戸大学連携創造本部より

単繊維の基本物性の測定-蜘蛛糸繊維から高弾性・高強力繊維まで-

1.研究の概要とキーワード

 繊維製品の基本単位である単繊維の基本的な力学的・熱的性質を測定し、種々の繊維の基礎データhttp://ww/集積を行っています。これらの性質は衣料用布地においては動作追随性や肌触りのよさに関与しており、布の設計に直接かかわっていることを明らかにしています。


2.他の研究との相違点・新規な点

 泥臭い方法ではありますが、単繊維1本のヤング率、繊維軸と直交する方向の圧縮弾性率、ねじりによるせん断弾性率を直接測定します。ヤング率は一般的に測定が行われていますが、それ以外の弾性率を直接測定したデータはわずかしかありません。
 単繊維の繊維軸方向、繊維と直交する方向両方の熱伝導率を測定します。
 衣料用繊維である天然繊維・化学繊維をはじめ、蜘蛛糸繊維から高弾性・高強力繊維まで幅広く測定を行っています。


3.内容

 単繊維は、繊維軸に極端に配向した高分子構造をもっています。   
 一般には、繊維の強さを表す弾性率としてヤング率のみを測定すること場合が圧倒的に多いのですが、それだけでは本来の繊維の性質を捉えていることにはなりません。
 そこでヤング率だけでなく、繊維軸と直交する方向の圧縮弾性率、ねじりによるせん断弾性率を直接測定します。また、熱特性として単繊維の繊維軸方向、繊維と直交する方向両方の熱伝導率を測定します。
 これらの値から総合的に単繊維の性質を捉え、糸、布といった繊維集合体の性質を捉えることを可能にします。人の感覚を計算することのできる布の性質を単繊維の性質から予測することが可能となると考えられます。

4.研究の適用分野

 衣料用繊維である天然繊維・化学繊維をはじめ、蜘蛛糸繊維から高弾性・高強力繊維まで


研究者  井上 真理
神戸大学発達科学部 人間環境学科
神戸大学連携創造本部より

触感の良さを計る

1.研究の概要とキーワード

 人が触れて使用する繊維製品の触感・風合いを、その力学特性(引張り、せん断、曲げ、圧縮特性)、表面特性、熱・水分・空気の移動特性から数値化して求めます。
   
2.他の研究との相違点・新規な点

   ・ 人の感覚である触感を数値化することができます。
   ・ 人が触る程度の低荷重域での材料特性を精密に測定することができます。
   ・ 用途に見合う最適な測定条件を決定します。
   ・ 主観評価によって得られた触感と同じような評価をする式を作ることができます。
   ・ 品質の高い繊維製品の設計を行うことができます。

3.内容
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 人の皮膚を引っ張ってみると、図1のように直線ではなく、下に凸の曲線を描きます。
 人が触れて使用する繊維製品の材料である布は、人の皮膚と似たような曲線を示します。そのため、肌触りの良さを感じることができるのです。
肌触りに関わる力はごく微少で図2に示したような引張、曲げ、せん断、圧縮変形特性と表面特性という複数の特性から得られることがわかっています。これは1970年代に川端・丹羽らにより明らかになり、人の感覚を計測することのできるKES-Fシステムが開発されました。これらの方法を利用して品質の高い繊維製品の設計を行うことを目的として研究を進めています。
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4.研究の適用分野

  ・ 肌触りが良く、着心地の良い高品質な衣料用布地の設計
  ・ 寝具(ふとん、毛布、シーツなど)
  ・ タオル類
  ・ 衛生用品(紙おむつ、生理用品など)
  ・ 自動車の内装材料    他


研究者  井上 真理
神戸大学発達科学部 人間環境学科
神戸大学連携創造本部より

ペプチドナノファイバー

1.研究の概要とキーワード

 ペプチド(またはタンパク質)を構成単位とし、自己組織化によってナノファイバー(チューブ、シートを含む)構造を形成するものを、自在に設計します。さらに、形成されたファイバーに対して機能を付与することで、多機能かつ高選択性の新規生体ナノ材料の創出を目指します。ここで、機能としては、タンパク質、DNA、金属などとの特異的結合や、酵素としての反応活性から電磁気的特性まで含みます。
 (特許出願済:2003-385670, 2004-151698, 2004-308542, 2004-359336)


2.他の研究との相違点・新規な点

 この材料は、水溶媒中で常温常圧下、自己組織化を用いて生成させることができ、微生物による大量発現および生分解可能である点から、環境調和型で将来に渡って継続的に利用を見込める材料となります。


3.内容

 アミノ酸数7~21個からなる小型のペプチドで(下図左、緑色)、自己組織化によって直径2~10ナノメートルのファイバー(下図中央)となるものの設計に成功しました。
手法はタンパク質の新規人工デザイン研究の手法を独自に開発適用したものです。
 さらに、ファイバーの長さや集積度の制御も可能となりつつあります。このナノファイバーに生体反応を適用することで、例えば酵素の固定化(下図右、青色が酵素、赤色は基質)や金属結合をさせることによる導電性の付与など、機能化を図ることが可能となりました。


4.研究の適用分野

バイオとナノテクノロジーの融合分野:
規則性を持ったナノ材料でありながら、多様な生体分子としての構造と機能を併せ持つため、従来合成高分子では適用できなかった分野(例えば医療材料、環境調和型材料)や、
より高い機能を要求される分野(プロテインチップなど)への適用が可能となりました。


研究者  田村 厚夫
神戸大学自然科学研究科
神戸大学連携創造本部より

電子顕微鏡はストレスに対する細胞応答を可視化できる①

1.研究の概要とキーワード

 作物は外界からさまざまの刺激ストレスを受けて生存しています。低温、乾燥、塩、紫外線といった物理ストレス、農薬や毒物などの化学ストレス、カビ、細菌、ウイルスといった病害ストレスがこれにあたります。病害ストレスをうけた作物は色々な防衛応答を行いますが、過剰ストレスに対抗できない場合は死滅し、克服した時は生存できます。ミクロ世界での病原菌で生じる機能分子を特定することがなにより重要です。
本研究は、エネルギーフィルター電子顕微鏡(元素分析電顕の1種)を用いて機能分子を可視化して、解析した防衛応答をもとに作物の増収を図ることを目的としています。
 

2.他の研究との相違点・新規な点

 病原菌の侵攻を受けた植物の応答を研究した例は数多くあります。その研究の殆どが純形態学的調査でした。感染に対する細胞の防衛反応を構造変化として電顕観察することには限界があることから、純粋な超微形態だけでは応答反応は解析できません。感染反応に内在する機能を司る物質分子の同定が不可欠となり、この機能分子をミクロレベルで可視化できることが次世代細胞学の目標となると考えられます。
 そこで、本研究では、植物の感染場面で、侵攻する側の病原菌に焦点を合わせ、侵入菌糸に生じる活性酸素を電顕下で可視化して、この物質をエネルギーフィルター電子顕微鏡を使って同定しました。電顕形態学は、感染による反応部位を特定して菌側の病原性に関る重要な機能分子を解析できる唯一の方法です。
  

3.内容

 二十世紀ナシには天敵がいます。ナシ黒斑病菌というカビです。このカビは二十世紀ナシだけを攻撃しますが、他の栽培ナシ(長十郎ナシ)を犯しません。この原因はこの菌が生産するAK毒素にあると言われています。

 極めて薄い毒素液を二十世紀ナシに接触させると、壊死が生じるが、他のナシ品種は全くの無害です。この菌が栄養を求めてナシ組織に侵入する前に、毒素は菌から分泌され二十世紀ナシの細胞膜の一部が破壊されます。毒素により生理的に弱った細胞は難なく菌の侵入をうけて病気になります。一方、病気にならない長十郎ナシでは毒素は効果を発揮しないため、菌の侵入は植物の抵抗により阻止されます。

 菌はナシ葉に侵入する時、特殊な攻撃器官(貫穿菌糸)をつくり、ドリルのように組織を穿って組織内に入るのですが、その時、物理的圧力を与える貫穿菌糸には活性酸素(過酸化水素)が生じます。この過酸化水素はビタミンCを与えると消えてなくなり、過酸化水素の無くなった貫穿菌糸はもはやナシ組織に侵入できなくなり、病気にはなりません。この過酸化水素はエネルギーフィルター電子顕微鏡を使うことによ今後の雑種第二代以降の造成に期待がもてる」(実験用小型ブタの開発、実験用小型ブタ導入・性能調査事業報告書、平成12年3月、(社)日本実験動物協会、50頁)との高い評価を得ました。りと検出でき、感染の反応部位を可視化できるのです。


4.研究の適用分野

 我々の研究は植物保護の分野にあたるもので、研究成果は直ちに作物増収に貢献することはありません。しかし、病害防除といった応用につながる研究には多くの基礎研究の成果があってこそ病害防除に貢献できます。「何故、作物は病気になるのか?」 「何故、病原菌は病気を引き起こすことができるのか?」「何故、多くの植物は病気にならないのか?」といった疑問に答える基礎研究が何より大事になります。我々の研究はその疑問に答える研究を行っています。                


研究者  朴 杓允
神戸大学自然科学研究科
神戸大学連携創造本部より

こころの病気とリーリンシグナル伝達系

1.研究の概要とキーワード

 当研究室では、リーリン欠損マウス・リーラーやSRKラット、さらにリーリンの下流で機能するDab1欠損マウス・ヨタリの神経回路網の研究をしています。これらの変異動物では、ニューロンの移動障害のために大脳や小脳をはじめとして脳の広い領域に構築異常があります。最近、リーリンが統合失調症やアルツハイマー病と関連している可能性が明らかになってきました。  


2.他の研究との相違点・新規な点

 リーリンは発生過程におけるニューロンの細胞移動を制御する分子として発見されましたが、成体でもその強い発現が持続することより、細胞移動の調節とは別の機能を持つことが以前より推測されていました。最近、統合失調症の前頭葉におけるリーリンの発現が半減していることが報告されました。またリーラーマウスのヘテロ動物では、不安が亢進していることが明らかになりました。またリーリンはアルツハイマー型痴呆とも関連しているようです。私たちのラボでは、このような精神疾患の根底にある神経ネットワークの異常を求めて、リーリンシグナル伝達系の研究をしています。
 

3.内容 

 リーリンは分泌性の巨大なタンパクで、大脳皮質や海馬ではカハール・レチウス細胞が分泌します。リーリンの受容体は、アポリポプロテインE受容体であると考えられています。
リーリンは受容体を介してDab1タンパクのリン酸化を誘導して、ニューロンの位置決めを行っています。また成体では、抑制性ニューロンがリーリンを発現します。


4.研究の適用分野

 分野:製薬企業 情報工学
 統合失調症やアルツハイマー型痴呆の発症メカニズムを明らかにし、これらの疾患の治療薬開発に貢献します。またリーリン欠損動物の神経ネットワークは、脳型コンピューターの開発や知的ロボットの開発にも良いモデルを提供します。  

研究者  寺島 俊雄
神戸大学医学・脳科学
神戸大学連携創造本部より

低分子量GTP結合タンパク質活性化の新規解析法

1.研究の概要とキーワード

 低分子量GTP結合タンパク質のRasファミリーとRhoファミリーには、活性型(GTP結合型)と不活性型(GDP結合型)が存在します。多くの癌組織でこれらの遺伝子に変異が見つかっており,癌の発症及び悪性化に関る癌分子として注目されています。本研究では、細胞内におけるこれらの低分子量GTP結合タンパク質の活性化を迅速にモニターするin situ可視化法を開発しています。


2.他の研究との相違点・新規な点

 In situ可視化法は,活性型の低分子量GTP結合タンパク質を特異的に認識するエフェクター分子の結合領域をプローブとして使用し,固定化処理をした細胞からGTP結合型を特異的に検出します。この方法は,蛍光共鳴エネルギー転移 (FRET) とは違い,内在性のタンパク質の検出が可能です。また,従来のプルダウンアッセイに比べて,簡便なうえ,比色定量法を用いる事で低分子量GTP結合タンパク質の活性化を指標としたハイスループット・スクリーニングが行えます。


3.内容

4.研究の適用分野
 細胞内シグナル伝達の研究ツールとしての利用
 抗癌剤および機能性食品のスクリーニング

研究者  上田修司・片岡徹・佐藤孝哉
神戸大学医学・分子生物学
神戸大学連携創造本部より

形態形成と疾患を制御するシグナル伝達機構

1.研究の概要とキーワード

 生物の形態形成を制御する細胞内シグナル伝達機構と、その異常によって引き起こされるがん等のシグナル伝達病の分子機構の解明を目指して研究を行っています。特に、動物の形態形成に必須な役割を果たしているWntファミリー増殖因子とその受容体として機能するRor2受容体型チロシンキナーゼに焦点を当てて分子・細胞・個体レベルでの解析を行っています。


2.他の研究との相違点・新規な点

 私たちはマウス受容体型チロシンキナーゼRor1およびRor2を同定し、発現解析や遺伝子欠損マウスの作成と解析を行うことにより、それらの発生過程における重要な機能を明らかとしてきました。また、Ror2がWnt5aの受容体として機能することを見出し、その詳細なシグナル伝達機構を解析中です。Ror2とWnt5aは形態形成に重要なだけでなく、その異常ががん等の疾患の原因にもなりうることから、本研究によって得られた知見は疾患の診断や治療方法の開発に応用します。
 

3.内容
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Ror2を介するシグナル伝達機構を明らかにするため、Ror2と相互作用する細胞外および細胞内因子の同定やWnt5aシグナル伝達経路におけるRor2の機能解析を生化学、分子生物学、細胞生物学、発生工学の手法を用いて進めています。また、Ror2によって制御を受ける細胞骨格の再構築機構を解析するとともに、DNAチップを用いた網羅的解析によりRor2によって発現調節を受ける遺伝子群の同定を行っています。これらの研究によりRor2を介するシグナル伝達ネットワークによる生命機能の制御機構を明らかにしていきます。


4.研究の適用分野

 Wnt5a・Ror2に始まるシグナル伝達ネットワークは個体発生だけでなくがん化やがん細胞の浸潤・転移、幹細胞の自己複製など様々な生命機能に関わっています。また、Ror2遺伝子の異常によるヒト疾患(劣性遺伝性Robinow症候群、B型短趾症)が報告されています。したがって、私たちは生物の形態形成機構の理解だけでなく、得られた知見をもとにこれら疾患の診断および治療方法の開発、そして再生医療への応用を目指します。
 例)遺伝性骨軟骨疾患の診断、がんの悪性度の判定とがんの浸潤・転移の制御および再生医療への応用


研究者  西田 満・野町 昭・依田成玄・南 康博
神戸大学医学・ゲノム科学
神戸大学連携創造本部より

チロシンキナーゼSykによる白血病化阻止機構の解明

1.研究の概要とキーワード

 チロシンキナーゼSykは、様々な固形がんに対して悪性化を阻止する作用が知られています。血液のがんである白血病についてその悪性化阻止のメカニズムを解明し分子治療への応用をめざしています。

 
2.他の研究との相違点・新規な点

 固形のがんでは細胞の浸潤や転移についてよく研究されてきましたが、血液のがんである白血病では細胞運動の臨床的重要性があまり認識されてきませんでした。本研究では血液細胞の運動性と発症機構の関連に注目しています。  


3.内容

未熟な血液細胞は上図のように骨髄微小環境の適切な刺激により成熟分化します。成熟に必要な接着や細胞運動にSykが必要であることがわかってきました。白血病は未成熟な血液細胞が血液中へ移行するためにおこると考えられています。Sykの運動性への関与が白血病発症にどのように関わるかその作用機構の解明をめざしています。


4.研究の適用分野

 白血病の治療法は化学療法、造血幹細胞移植によって進歩してきましたが、未だに難病です。この研究が発展すれば、より安全で確実な診断法と治療法の開発につなげる事が可能です。


研究者  山村 博平・通山 由美
神戸大学医学・ゲノム科学
神戸大学連携創造本部より

消化管がん転移を制御するチロシンフォスファターゼシグナルの解析

1.研究の概要とキーワード

 転移は消化管がんによる死亡の最大の原因です。従って、がんの克服を前提とした研究では、転移に特異的な生体情報をもたらす分子機構の解明が必要となります。私たちは網羅的遺伝子発現解析から大腸がん肝転移巣で特異的に高発現する遺伝子産物として単離されたチロシンフォスファターゼPRL-3 (phosphatase of regenerating liver-3)の転移能マーカーとしての意義、転移の機構における役割を解析しています。
 

2.他の研究との相違点・新規な点

 PRL-3が関与するシグナル伝達系はいまだ解明されていませんが、細胞膜近傍で作用するチロシンフォスファターゼとして様々な細胞内シグナルを制御する可能性が考えられ、転移という複雑な生命現象を反映する様々な作用分子の同定が期待されます。


3.内容

 これまでに多数の臨床例を用いた検討から、PRL-3を高発現する大腸がん、胃がんは転移能が高い事を明らかにしてきました。また、PRL-3を高発現する大腸がんや胃がん細胞にPRL-3特異的干渉RNA(iRNA)を作用させることにより、がん細胞の試験管内での運動・浸潤能や動物モデルにおける転移能が著明に抑制されることを実験的に証明しました。現在、PRL-3特異的干渉RNA作用後のがん細胞内におけるリン酸化プロテオームプロファイリングを計画中です。


4.研究の適用分野

 PRL-3の作用分子の同定とシグナル伝達機構の解明により、がん転移に特異的な生体情報を抽出が可能と考えます。さらに個々の作用分子に対する阻害物質のスクリーニングから、新たながん転移抑制薬を開発することが出来るものと考え研究中です。


研究者  横崎 宏
神戸大学医学・生体情報医学
神戸大学連携創造本部より

遺伝子改変マウスを用いた生体高次機能の解析

1.研究の概要とキーワード

 記憶・学習。運動といった中枢神経系の高次機能の形成を解き明かすことは、脳神経科学の重要課題です。また、発がんおよび転移浸潤機構は、基礎医科学のみならず臨床面においても詳細な解明が待たれています。我々は、遺伝子改変マウスを用いた分子・細胞・固体レベルの研究を通して、これらの問題に迫ろうと考えています。
 

2.他の研究との相違点・新規な点

 我々の作製する遺伝子改変マウスは、従来行われてきた遺伝子欠損のみならず、部位特異的・時間特異的に遺伝子を発現を制御することができるという特長を持っています。
これらのマウスを用いることによって、注目する分子の機能をより詳細に解析することができます。
 

3.内容

 グルタミン酸受容体mGluR1および低分子量タンパク質Rac1の脳神経系および発がんにおける機能解析を中心に研究を進めています。


4.研究の適用分野
 脳神経系の臨床分野への応用。
 抗がん剤の開発および新規ターゲット分子の同定。


研究者  饗場 篤
神戸大学医学・分子細胞生物学
神戸大学連携創造本部より

DNA損傷応答と細胞のがん化

1.研究の概要とキーワード 

ヒトのゲノムDNAには膨大な遺伝情報が記述されていますが、情報の維持・管理の機構が常に作動しており、遺伝情報の安定性が保たれています。 放射線や化学物質によりDNAに傷(DNA損傷)がつくと、 Chk2をはじめとするタンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)とよばれる一群のタンパク質が活性化され、様々な標的タンパク質(エフェクター分子群)にリン酸基を付加し、その働きを調節することで、細胞周期の停止、 DNA損傷の修復、細胞死(アポトーシス)を引き起こします。さらにDNA損傷にともない新たに出現するWip1ホスファターゼがDNA損傷応答を解除し、細胞が損傷前のように分裂・増殖することを可能にします。この遺伝情報の安定性を保つ仕組みに異常が生じると、 DNAに変異が蓄積し、がんなどの疾患をもたらします。実際にヒトのがんにおいて、 Chk2およびWip1の遺伝子の異常が報告されており、 Chk2はがん抑制遺伝子産物、 Wip1はがん遺伝子産物として知られています。


2.他の研究との相違点・新規な点

 これまでにDNA損傷応答の解除機構についてはほとんど知られていませんでしたが、私たちはWip1ホスファターゼを介したDNA損傷応答の解除機構を発見し、この機構の異常が細胞のがん化に重要な役割を果たしていることを明らかにしています。 本研究ではDNA損傷応答の全体像の解明を目指しています。

3.内容
68_02.gif
DNAが傷を受けるとChk2キナーゼはリン酸(P)化され活性化されます。その後、エフェクター分子群を介してWip1ホスファターゼが誘導され、 Wip1がChk2キナーゼを脱リン酸化することで不活性化させ、一連のDNA損傷応答を解除します。現在、 Wip1 とChk2に加え他のDNA損傷応答関連タンパク質との機能連関解析およびWip1の活性調節の仕組みについて解析中です。

4.研究の適用分野

 本研究は細胞周期や細胞死の研究と密接な関係があります。また、より的確な新しいがんの診断法の確立ならびに本研究で対象としている一連のタンパク質をターゲットとした
より効果的ながん治療への応用が期待されます。
 例)がんの悪性度・予後の判定、新しい制がん剤の開発

研究者  依田成玄・西田 満・可児修一 大西伸幸・南 康博神戸大学医学・ゲノム科学
神戸大学連携創造本部より

遺伝子改変マウスを用いたグルコース恒常性の維持機構

1.研究の概要とキーワード

 インスリン分泌やインスリン作用に関わる分子の遺伝子改変マウスは、グルコース恒常性の維持機構の解明、多様な糖尿病の病態の理解、あるいは病態に即した新薬の開発に極めて有用な動物モデルです。

2.他の研究との相違点・新規な点

 スルホニル尿素剤が効かない(一次、二次無効)糖尿病、ストレス下で増悪する糖尿病など、臨床の場でよく見られる糖尿病の病態を模したマウスを研究に応用できます。

3.内容

 血糖を下げる唯一のホルモンであるインスリンは膵臓のβ細胞から分泌され、グルコース恒常性の維持に中心的な役割を果たしています。インスリン分泌機構の破綻は糖尿病をきたしますが、ヒトで見られる糖尿病の発症原因は多様であり、病態の理解や病態別の糖尿病薬の開発には、ヒト糖尿病の病態を模した遺伝子改変マウスは極めて有用なツールです(図参照)。たとえば、臨床で広く用いられるスルホニル尿素剤の標的分子であるATP感受性K+チャネルの欠損マウスではグルコース応答性のインスリン分泌がほとんど見られません。このようなマウスはATP感受性K+チャネルを介したインスリン分泌機構を解析する上で有用であるばかりでなく、スルホニル尿素剤とは作用点の異なる糖尿病治療薬の探索・開発にも応用が可能です。


4.研究の適用分野

  研究適用分野:糖尿病治療薬の開発


研究者  三木隆司・清野進
神戸大学医学・脳科学
神戸大学連携創造本部より

遺伝子発現プロファイルを用いた代謝調節に係わる新規分泌蛋白の同定

1.研究の概要とキーワード

 近年、レプチン、アディポネクチンといった新規ホルモンが次々と同定されて注目を集めています。本研究では遺伝子発現プロファイルを用いて、新規分泌蛋白を同定し、その中でも代謝調節に関連したものをさらに解析することにより、日本においても大きな問題となっている生活習慣病の予防、診断、治療に結びつけます。

2.他の研究との相違点・新規な点

 現在の研究は主に既知のホルモンによって病態の理解が試みられています。しかし、生活習慣病の病態が十分解明されているとは言えません。そこで、新規分泌蛋白を同定解析することにより新たな展開が期待できます。


3.内容

上記の方法にそって培養脂肪、肝臓、筋肉細胞を様々な代謝の変化で刺激したときに変動する遺伝子をDifferential display, cDNA マイクロアレイを用いて解析しました。
その中で未知の分泌蛋白を選び出し、実際に分泌されること、代謝調節に関連している臓器で発現していること、代謝刺激によって調節されていることを指標に述べ26000遺伝子をスクリーニングし14個の分子を選び出しました。すでにそのうち9つの分子は実際に分泌されることを確認し、遺伝子組み換え産物を作製してスクリーニングを行ったところ、血糖低下作用がある分子AC4、血糖上昇作用のある分子AC1を見いだしました。現在ノックアウトマウス作製によりその生理的意義の解析を進めています。

4.研究の適用分野

  これらの新規生理活性物質は糖尿病、肥満など生活習慣病の発症に関わっている可能性があります。その作用機序を明らかにすることにより生活習慣病の診断、治療、病態の理解に役立てたいと考えています。その上でトランスレーショナルリサーチとしての発展を目指しています。 


研究者  高橋 裕・千原 和夫
神戸大学医学・応用分子医学
神戸大学連携創造本部より

全反射蛍光顕微鏡を用いたインスリン分泌顆粒動態の解析

1.研究の概要とキーワード

 膵β細胞から分泌されるインスリンは生命維持に不可欠なホルモンです。インスリン分泌はグルコースホメオスタシスの維持の中心的役割を果たし、その破綻により糖尿病をはじめとした様々な病態が引き起こされます。現在、インスリン分泌の分子機構の解析を新しい手法である全反射蛍光顕微鏡と分子イメージングを組み合わせて用いて進めています。


2.他の研究との相違点・新規な点

 全反射蛍光顕微鏡は細胞がカバーガラスに接着する面から100-200 nm以内を観察できることから、細胞膜付近で起こる開口分泌、エンドサイトーシス、受容体リン酸化等の細胞活動の解析において非常に有効な手段です。本研究では、膵β細胞株にGFPで標識されたインスリン(インスリンGFP)を導入することによって、生細胞におけるインスリン顆粒の動態をGFPの動態として可視化し、顆粒の細胞膜への融合の回数を測定することによりインスリン分泌を評価します。RIAやELISAが単にインスリンを定量するのに対し、本法では時間、空間的情報も同時に取得できることから、インスリン分泌を多角的に検討出来ます。


3.内容

 膵β細胞株、遺伝子改変膵β細胞株、糖尿病モデル動物からの初代培養膵β細胞にインスリンGFPを導入し、インスリン分泌の動態を解析します。他色の蛍光タンパク質で標識された分子をさらに導入することにより、インスリン分泌とその調節因子の相互作用の観察が可能です。

4.研究の適用分野

 ・インスリン分泌能の改善を目的とした医薬品の作用機序の解明
 ・受容体、チャネル、トランスポーター分子を蛍光色素(あるいは蛍光タンパク質)を標識  
  することにより、これらの分子を標的とした医薬品のインスリン分泌に対する影響の解明

研究者  柴崎 忠雄・清野 進
神戸大学医学・脳科学
神戸大学連携創造本部より

インスリンによる肝臓の代謝制御

1.研究の概要とキーワード
61_01.gif インスリンは糖脂質代謝の制御に中心的な役割を果たすホルモンであり、生体でのインスリン作用の障害(インスリン抵抗性)は、糖尿病や高脂血症、高血圧といった様々な生活習慣病を引き起こすと考えられています。インスリンがそのホルモン作用を発揮する標的臓器として、肝臓は最も重要なものの一つです。肝臓では糖の蓄積と産生、脂肪の合成と酸化がインスリンの作用によって適切に制御されています。糖尿病や高脂血症ではその制御メカニズムが障害されることにより種々の代謝異常が生じます。私たちは肝臓のインスリン作用の中でも、特に糖・脂質代謝に関わる様々な酵素遺伝子の発現制御のメカニズムについて、遺伝子改変マウスの作成などを通じて研究を進めています。


2.他の研究との相違点・新規な点
61_02.gif私たちは肝臓において糖脂質代謝関連遺伝子の発現を制御する新規なメカニズムや転写調節因子を明らかとすることを研究のひとつの目標としています。最近、転写調節因子STAT3を肝臓でのみ欠失したマウスを作成し、このマウスでは肝臓の糖新生及び脂肪酸合成に関わる酵素遺伝子の発現が増加することにより耐糖能障害や脂肪肝、血清脂質の異常が生じることを見出しました(Nature Medicine, 10:168, 2004)。また、逆にインスリン抵抗性糖尿病モデルマウスの肝臓に活性型STAT3の遺伝子を導入すると、糖新生及び脂肪酸合成に関わる酵素遺伝子の発現が抑制され糖尿病や脂肪肝、血清脂質の異常が改善することも明らかとしました。すなわち肝臓のSTAT3シグナルを特異的に活性化することができれば、様々な生活習慣病の治療につながる可能性があります。


3.内容

 STAT3以外にも、代謝異常症の治療標的になりうる転写調節因子を同定することを目標に、肝臓の転写調節機構について検討を進めています。例えば、マウス肝臓における生理的、また病理的な遺伝子発現の変動を遺伝子チップにより網羅的に解析を行った結果、HLH型転写調節因子であるStra13やKruppel-like型転写調節因子KLF15が代謝関連酵素遺伝子の発現制御に関与することも見出しています。

 
4.研究の適用分野

 肝臓の遺伝子発現制御に介入することにより、糖尿病や高脂血症、脂肪肝などの種々の代謝異常症・生活習慣病の治療薬の開発につながることが期待されます。


研究者  小川 渉・井上 啓・春日雅人
神戸大学医学・応用分子医学
神戸大学連携創造本部より

HNF (肝細胞核因子) の発現と機能解析

1.研究の概要とキーワード

 個体発生の過程で原始腸管から膵臓や肝臓の組織形成には、HNF (肝細胞核因子)と呼ばれる肝細胞に高発現する核蛋白の存在が必須です。また、全糖尿病の2-3%を占めるMODY (若年発症型糖尿病)発症との関連では、MODY1は、HNF-4α遺伝子の変異、MODY3は、HNF-1α遺伝子の変異、MODY5は、HNF-1β遺伝子の変異との関係が明らかとなりました。肝癌が脱分化し、より悪性度を増すときにも、HNFの機能異常が関与しています。このような疾患におけるHNFの発現、機能異常を解析します。

2.他の研究との相違点・新規な点

 遺伝子、蛋白レベルでの異常、細胞内局在の異常とHNF機能異常を疾患において解析します。

3.内容

 MEK(肝癌細胞)もNEC(胆管癌細胞)もHNF-4を発現していますが、MEKは、核内に発現しているのに、NECは、核外の細胞質のみに発現しています。そのために下流(図1説明)にあるHNF-1αは発現しません。このような細胞質内局在による機能異常は、リン酸化などの修飾でも起こります。

4.研究の適用分野

 HNFが関わる疾患(肝細胞脂肪化、Nonalcoholic steatohepatitis, NASH、肝細胞癌、胆管癌、糖尿病など)の遺伝子、分子レベルでの解析。


研究者  林 祥剛
神戸大学医学部 遺伝病統御学
神戸大学連携創造本部より

難治性肝細胞癌に対する経皮的肝灌流と生体肝移植を両輪とする神戸新戦略

1.研究の概要とキーワード

 肝細胞癌では腫瘍進行度と肝機能の二つの座標軸によって治療法が選択されていますが肝臓全体に腫瘍が広がった多発進行例や高度肝機能障害例では有効な治療法がなくその対策が必要でした。

2.他の研究との相違点・新規な点

 神戸大学では肝細胞癌治療において2つの先進的治療法と既存の治療法を組み合わせた神戸新戦略を策定しました。この神戸新戦略により肝細胞癌治療において類例のない治療域が確保され、また病態に応じた最善の治療選択を可能にしました。その結果、他施設では絶望視されていた難治性肝細胞癌患者でも2年を超える中長期生存が可能となりました。

3.内容

 神戸新戦略は経皮的肝灌流と生体肝移植という2つの先端治療と既存の治療法を病態に応じて組み合わせることにより成立しています。
 経皮的肝灌流は神戸大学で開発された画期的な肝局所高用量化学療法です。体外循環で肝動注後の余剰抗癌剤を除去することにより通常の10倍量の抗癌剤を低侵襲に反復的に投与が可能となります。進行肝細胞癌例に対して65%以上の有効率と10%以上の完全緩解を得ています。
 また高度肝機能障害を有する肝細胞癌例に対しては肝移植が唯一の根本的療法ですが癌再発や前治療による血管合併症に対する対策などが必要となります。この点で神戸大学は独自の肝細胞癌に対する移植基準を提唱するとともに高度門脈閉塞に対する血管置換の技術を確立しました。

4.研究の適用分野

 難治性肝細胞癌における治療域の拡大および予後の改善


研究者  福本 巧、具 英成
神戸大学医学部 医療国際交流センター
神戸大学連携創造本部より

癌細胞におけるDNAダメージセンサー蛋白Rad9の発現と機能解析

1.研究の概要とキーワード

 最近のゲノム研究によりDNAダメージセンサー蛋白質群はDNAダメージチェックポイントシグナル伝達系の最上流で働くと考えられています。また分子生物学分野での研究においてDNA ダメージセンサー蛋白質群の中でRad9蛋白質はRad1およびHus1と共にヘテロトリメトリック複合体(9-1-1)を形成し、DNA障害部位でスライディングクランプとして働く可能性が示されています。そしてRad9蛋白質のC末端にはnuclear localizing sequence (NLS)、さらに複数のリン酸化部位を持ち、DNA損傷により核内に集積し、また過剰リン酸化を示すという興味深い特徴が明らかになっています。当該研究では、解明されてきているRad9蛋白の性質が癌細胞においてどのような意味を持つかを明らかにして,本蛋白質の研究を生物学領域から臨床医学領域につなげることを,その位置づけと考えます。

 核周辺にRad9蛋白質の集積が認められます。

2.他の研究との相違点・新規な点

 癌細胞におけるRad9の状態を、遺伝子、mRNAおよび蛋白レベルでで捕らえ、その機能および異常を解析し、癌治療に向けての標的になり得るかを検討します。

3.内容

 肺癌細胞株および肺癌切除組織を用いて、遺伝子異常の有無、mRNAの発現レベルの解析、蛋白質量、局在、活性を調べます。

4.研究の適用分野

 肺癌に限らず、多くの悪性腫瘍における本蛋白質の機能を明らかにして、新たな分子標的の確立を目指します。

研究者  真庭 謙昌、吉村 雅裕、大北 裕、林 祥剛  
神戸大学医学部 循環動態医学
神戸大学連携創造本部より

抗癌剤の分子標的としてのホスホリパーゼCe (PLCe)

1.研究の概要とキーワード

 ras癌遺伝子は、ヒトに発生する癌の約20%において突然変異によって活性化しており、癌化に関与しています。その遺伝子産物(Ras蛋白質)によって活性化されるホスホリパーゼC(PLC)であるPLCeを不活性化する変異を加えた変異マウスは、ras癌遺伝子の変異に依存性の皮膚二段階化学発癌に対して抵抗性を示します(写真)。このことから、PLCeがRasの下流で細胞の癌化に関与している重要な標的蛋白質である事が示唆されました。(特許出願済み:特願2004-122299)
(論文:(発癌実験に関して) Bai et al., (2004) Cancer Res., vol. 64, pp 8808; (変異マウス作成とその表現型に関して)Tadano et al., (2005) Mol. Cell. Biol., vol. 25, pp 2191)

2.他の研究との相違点・新規な点

 これまでのところ、Rasによって直接制御を受ける標的分子がRas依存性の発癌に関わる事が実験的に示された例は、このPLCe変異マウスを用いた皮膚発癌実験以外では報告がありません。

3.内容

 PLCeは細胞増殖因子などの刺激に応答して、Ras依存性にジアシルグリセロールとイノシトール3リン酸の二種類の細胞内セカンドメッセンジャーを産生し、様々な細胞応答を引き起こします。私達が作製したPLCe遺伝子に変異を導入し不活性化させた変異マウスの皮膚を、発癌イニシエーター(遺伝子の変異誘導物質)であるジメチルベンズアントラセン(DMBA)で処理した後、発癌プロモーターであるホルボールエステル(TPA)で20週間にわたり処理し、腫瘍(パピローマと扁平上皮癌)の発生を継続的に観察しました。この方法による腫瘍の発生は、ヒトの癌で見られるようなras癌遺伝子の活性化を必要とします。PLCeを不活性化すると、下の写真に示すように、パピローマの発生や、その後の悪性化が劇的に抑制されます(+/+は野生型を、DX/ DXはホモに不活性化された変異PLCe遺伝子を持つもの、DX/+はヘテロに変異遺伝子を持つものを示します)。また、この変異マウスの表現型解析から、この分子の不活性化は、胎生期の心臓半月弁形成の異常を誘導しますが、それも寿命を縮めたりするほどの重篤なものでは無く、またそれ以外の致死的な異常も引き起こさない事が分かりました。

4.研究の適用分野

 Rasを標的とした抗癌剤は、ファルネシル基転移酵素阻害剤などが提案されていますが、いずれも良い効果を示しておりません。個体レベルでその重要性が示されたPLCeは、ras癌遺伝子変異を伴うヒトの癌において、有用な分子標的になると思われます。また、PLCeの不活性化に伴う異常は胎生期に限られるので、PLCeを特異的に阻害する薬剤は副作用の極めて少ない抗癌剤になる可能性があります。

研究者  枝松 裕紀、片岡 徹  
神戸大学医学部 分子細胞生物学
神戸大学連携創造本部より

インターフェロン-αの肝発癌抑制効果

1.研究の概要とキーワード

 C型肝炎感染者からの発癌予防として最も有効な治療法は、ウイルス排除を目的としたインターフェロン(IFN)治療です。臨床的にはIFNの発癌抑制作用が示唆されていますが、その直接の機序についての詳細は不明です。IFNの直接的な肝発癌抑制効果の有無とその機序を解明するためにラット肝発癌モデルを用いてIFNの肝発癌過程に対する効果を検討しています。さらにIFNと細胞周期に関与する薬剤の併用による肝発癌抑制を得る効果的な治療法の開発を行っています。

2.他の研究との相違点・新規な点

 私たちはウイルス、線維化といった要素を含まないラットの肝発癌モデル(Solt and Farber法)を用いて、直接的なIFNの発癌抑制効果およびそれに関わる機序について検討しました。 これまで得られた知見は慢性肝疾患や肝癌の治療方法の開発に応用できるものと考えています。

3.内容

 IFN投与によってラットの肝発癌過程における前癌病変の抑制効果がみられ、その結果癌の発生、進展が抑えられていました。この抑制効果はIFNによる細胞増殖抑制作用が関与しており、その機序としてP21の誘導が重要な役割を果たしている可能性が示唆されました。IFN投与継続群ではIFN初期のみ投与群にくらべ腫瘍の抑制効果が大きかったことから、IFNは肝癌癌化進展にも作用していると考えられました。
これらの研究によってP21依存性に細胞増殖抑制作用を有するIFNと細胞周期に関連のある薬剤との併用で抗腫瘍効果を高める可能性が示唆され現在研究中です。

4.研究の適用分野

 近年行われた大規模な多施設研究によるとIFN治療群は非治療群に比べ発癌のリスクが約半分に低下し、ウイルス駆除者では1/5になることが示されました。また、たとえウイルスの排除に至らなくとも発癌のリスクを下げるという報告や、肝癌切除後のIFN投与によって術後の再発が抑制されるといった報告がみられます。このように、臨床的にはIFNの発癌抑制作用が示唆されています。今回私たちは、 IFNの直接的な肝癌発癌抑制作用を証明し、その機序の一端を解明しました。得られた知見をもとにこれら慢性肝疾患、肝癌の治療方法の開発、医療への応用を目指します。

研究者  加藤美有紀・瀬尾 靖、矢野 嘉彦、春日 雅人 
神戸大学医学部 応用分子医学
神戸大学連携創造本部より

インターフェロン少量長期投与による肝移植後C型肝炎再発制御法の研究開発

1.研究の概要とキーワード

 2004年1月よりC型肝炎による肝硬変が生体肝移植の保険適応として認められたため、C型肝炎陽性肝移植患者は急増しています。しかしこのような肝移植患者では肝炎ウイルスは高率に移植肝に再感染を来たし、移植後5年で10-20%の患者が再度肝硬変に陥り、中長期的には生存率が20%前後低下するため、その治療法の開発が急務となっています。

2.他の研究との相違点・新規な点

 通常の慢性C型肝炎患者に対するインターフェロン・リバビリン併用療法は、ウイルス排除を最終目的とし、高容量のインターフェロンとリバビリンを6か月もしくは1年間投与することが標準的プロトコールとなってます。標準的プロトコール終了時にウイルス排除ができなかった患者では、治療を継続してもウイルス排除が期待できないため、治療は継続されず、C型肝炎移植患者に一年を超えて持続的に投与する治療スキームは未開発です。

3.内容

 慢性C型肝炎の標準療法となっているインターフェロン・リバビリン併用療法は、ウイルスの排除を目的としており、移植患者でも試行されていますが移植前後の予備力の低下した患者では、治療のコンプライアンスが低く治療成績は満足できるレベルにありません。
 そこで我々は、ウイルス排除を目的としない低容量のインターフェロン・リバビリン併用療法のプロトコールを開発し、現在までに生体肝移植後C型肝炎再発をきたした3名の患者にインホームドコンセントの上で持続投与(最長8年)しています。これらの患者では、ウイルスは排除できないものの、肝機能は良好に維持されています。この新しい抗ウイルス治療法は、移植成績向上を目指すための実現生の高い研究であり、プロトコールの有用性が証明できれば患者にとって非常に有益です。
 今後はこの治療法の有効性をを臨床第2相試験として検討するとともに、肝炎制御の機構を分子生物学的に解析する予定です。

4.研究の適用分野

 C型肝炎陽性肝移植後及び慢性C型肝炎患者でインターフェロン・リバビリン併用療法で、ウイルス排除困難例が対象となります。

研究者  福本 巧、具 英成
神戸大学医学部 医療国際交流センター
神戸大学連携創造本部より

経皮的肝灌流化学療法による進行多発肝細胞癌の新治療体系の確立

1.研究の概要とキーワード

 進行多発肝細胞癌(HCC)には有効な治療法がなく、中〜長期の生存は絶望視されていました。私達は打開策として患者様の負担が小さい低侵襲性の経皮的肝灌流化学療法(PIHP, Percutaeous Isolated Hepatic Perfusion)を考案し実用化しています。本法は現存する最強の肝局所化学療法であり、他治療ではとても達成できなかった局所制御ができるようになりました。
  

2.他の研究との相違点・新規な点

 従来からHCC多発進行例では肝動脈塞栓術や動注化学療法が姑息的に行われており、奏効率・生存率とも極めて不良でした。こうした現状を打開する目的で神戸大学の肝臓外科チームは肝静脈分離・活性炭濾過を併用する新しい肝動注化学療法を開発しました。その特徴は1.通常の約10倍の高用量抗癌剤を肝局所に投与可能、2.薬剤の全身副作用を大幅に軽減、3.鼠径部1ヶ所の切開によるカテーテル治療のため低侵襲で反復治療が可能の3点です。本法は大がかりで複雑な手術が必要であった以前の肝灌流と比較すると技術的に簡便で侵襲も低く、今までの肝灌流の概念を塗り替える画期的な肝癌治療法です。

3.内容

 特殊カテーテル(4-lumen・2-balloon catheter)を大腿静脈から肝臓後部の下大静脈内に進め、抗癌剤の肝動脈内投与に際し、このカテーテルを用い肝静脈を分離します。バルーン間の側孔から肝静脈血を選択的に脱血し、活性炭で吸着濾過した後、全身へ返血します。本法により臨床第I,II相試験ではHCC(stage IVA)に対する奏功率64%,5年生存率20%と1年前後しか生存が期待できなかった進行肝癌の治療成績が著明に向上しています。現在、減量肝切除にPIHPを併用する2段階治療にも取り組んでおり、今後新しい抗癌剤の使用や感受性テストを併用することによりさらに有効率の向上をはかりたいと考えています。

4.研究の適用分野

 PIHPのシステムは肝臓のみならず骨盤内領域の癌(子宮や直腸)にも応用できます。さらに薬剤の活性炭吸着濾過率が高率であればPIHPを用いて肝臓内だけでの各種薬物代謝動態を調べることができます。また特殊カテーテルは改良を加えることで静脈系分離をはじめとするあらゆる治療器具への適応が考えられます。


研究者  富永 正寛、岩崎 武、福本 巧、具 英成
神戸大学医学部 肝臓・移植外科
神戸大学連携創造本部より

ヒストンアセチル化修飾による自己免疫疾患の治療法開発

1.研究の概要とキーワード

 私たちはヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の関節リウマチの滑膜細胞と全身性エリテマトーデスのリンパ球に対する作用機所を解明し、新たな創薬の標的を見出すべく研究を推進しています。
  

2.他の研究との相違点・新規な点

 ヒストンの修飾が遺伝子の転写制御に関与している。(morinobu et al. JBC 2004)。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は従来の免疫抑制剤に比べ、特に血液系がん細胞の分化と増殖抑制作用を有するが、正常細胞に対する作用は少ないことが知られています。関節リウマチの滑膜細胞と全身性エリテマトーデスのリンパ球は、あたかも腫瘍であるかのように振る舞い各々の疾患の病態を特徴づけています。私たちはこのような特殊な細胞に注目し、免疫抑制剤としてのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の作用を解明し創薬の標的を同定することを目的としています。

3.内容

4.研究の適用分野

 新しい薬の開発、治療法の確立


研究者  森信 暁雄
神戸大学医学部 生体情報医学
神戸大学連携創造本部より

腎不全・糖尿病合併症病態解明と治療法の開発

1.研究の概要とキーワード

 日本の透析患者数は24万人に達し、今後もさらに増える見込みであり、現在では糖尿病がその最大の原因です。したがって、医療経済も勘案すると、腎臓を含む糖尿病合併症の病態解明と治療法の開発が、きわめて重要です。われわれは、これまで腎不全における骨代謝異常と糖尿病における腎障害の発症機序を中心に研究を重ねて来ましたが、その中で、体内の多くの臓器で特定のホルモンに対する反応が低下していることが、重要なことを示してきました。最近は特に,腎不全で血清中に蓄積する物質(尿毒症物質)の作用、酸化ストレスに注目して、研究を進めています。
  

2.他の研究との相違点・新規な点

 腎不全や糖尿病という、実験動物でも長期には再現できない異常な病態を題材に解析することにより、病気の治療法だけでなく、その機序に基づいた新しいホルモン作用や細胞機能の解明につながる知見を見いだします。

 
3.内容

 継代および初代培養細胞、モデル動物、遺伝子操作動物、ヒト検体(血清等)を使って以下の検討を行ない、複数の分子の作用機序を解明しました。

1.腎不全で蓄積する物質の動態とホル モン阻害作用
 骨の副甲状腺ホルモンに対する抵抗性に、腎不全で蓄積するインドキ シル硫酸が関与していることを証明しました。

2.酸化ストレスの改善による糖尿病性腎症、骨症の治療効果
 トランスジェニックマウスで生体内酸化ストレスを改善することにより、糖尿病性腎症の発症を予防出来ることを示しました。

3.細胞特異的作用をもつホルモン製剤の開発
 骨芽細胞、副甲状腺細胞に対する特殊作用を持つ薬剤を検討しています。


4.研究の適用分野

 モデル動物を用いての新しい薬剤の腎症、骨症への効果が検討可能です。また、本研究で対象としている一連のホルモン、タンパク質をターゲットとしたより効果的な新しい腎不全・糖尿病合併症の治療への応用が期待されます。


研究者  濱田 康弘1、河野(新居) 智子2、深川 雅史1,2
神戸大学1.医学部附属病院 腎臓内科学、2.医学部附属病院 代謝機能疾患治療部
神戸大学連携創造本部より

自己PRPゲルを用いた再生医療

1.研究の概要とキーワード

 血液から血小板を抽出・濃縮した多血小板血漿(Platelet Rich Plasma: PRP)は、多種類の自己成長因子をバランスよく含んでおり、創部治癒、骨再生を促進します。本研究では自己PRPを細胞培養液に添加し、従来使用される非自己成分を排除した、安全かつ取り扱いやすい細胞移植用ゲル状の担体を発案しました。
  

2.他の研究との相違点・新規な点

 (1)現在PRPの多くは専用の採取機器を使用して精製されていますが、
   汎用の遠心分離機で精製可能です。
 (2)自己PRPを培養液に添加させるだけでゲル化に成功
    (従来法では塩化カルシウムとトロンビンが必要)
 (3)PRPゲル内で培養した細胞は重層化し高密度の増殖・分化が可能。
 (4)ゲル状のため細胞移植時に、細胞拡散を防ぎ、利便性がよい。

 
3.内容

 再生医療の3つの柱である、細胞(Cell)、成長因子(Signaling molecules)、担体(Scaffold)
のうち、PRPゲルは成長因子と土台の2つの働きを兼ね備えます。
 PRPゲル内で培養した細胞は重層化し、ウシ血清使用群より高密度の増殖能を示しました。特に間葉系幹細胞では、特殊な分化促進培地を必要とせず、PRP添加培地のみで骨への分化が可能であることが明らかになりました。


4.研究の適用分野

 骨のみならず、軟骨、皮膚、粘膜、筋肉、脂肪、神経など多方面の生体組織の再生に使
用可能です。


研究者  綿谷 早苗
神戸大学医学部附属病院 歯科口腔外科
神戸大学連携創造本部より

毛髪形成能をもつ培養複合皮膚の開発

1.研究の概要とキーワード

 皮膚や口腔粘膜の一部からの培養上皮シートはすでに再生医療の一環として施行されていますが、把持し縫合できる移植材料は少なく、生着性が悪く、かつ、毛髪などの付属器を持つまでには至っていません。本研究の最終目標は、毛髪形成能をもつ培養複合皮膚の開発です。
  

2.他の研究との相違点・新規な点

 まず、我々はすでに、毛包からの外毛根鞘細胞(上皮系)と毛乳頭細胞(間葉系)の培養方法を確立しています。また、表皮と口腔粘膜においてはすでに培養複合上皮の作製に成功し、培養複合口腔粘膜に関しては文部科学省高度先進医療開発経費により100例近くの臨床応用を施行済です。

 (1)頭髪を単純に抜去するのみのため本人の犠牲がほとんどない。
 (2)ウシ胎仔血清に替わり本人の血清を使用しプリオン病危惧を回避する。
 (3)マウスの細胞を栄養供給に使用しないことから安全性と倫理性が高い。
 
3.内容


4.研究の適用分野

 研究適応:発毛するか否かは全く不明なので、男性型脱毛を呈している患者さんのボランティアを募ります。発毛がなければ、以前の禿頭のままとなります。培養毛乳頭細胞は半永久的に増殖可能なので、患者さんが望むならば、何度でも注射で注入移植が可能です。しかも移植組織なので無痛です。


研究者  寺師 浩人
神戸大学医学部附属病院 形成外科 
神戸大学連携創造本部より

パルミチン酸 (16:0) の毛髪への応用

1.研究の概要とキーワード

 男性型脱毛症(禿頭)に悩む青年・壮年男性の方は多いのですが、エビデンスに基づいた毛髪再生(育毛)材料としては、現在ミノキシジル(リアップ)と2005年度認可予定のフェナステリド(プロペシア)のみです。毛髪そのものが主にケラチンと脂質成分から成り立っていることを考えますと、毛髪研究には脂質の主要構成成分である脂肪酸は不可欠の因子です。近年、皮膚におけるセラミドやスフィンゴシンのほかリノール酸 (18:2)、リノレン酸 (18:3)、EPA (20:5)、DHA (22:6) などの必須脂肪酸の役割が解明されてきています。これら脂肪酸の毛髪への役割は不明な点が多く、これからの研究、開発材料として大きな期待を持った将来的ニーズが高いと考えます。
  
2.他の研究との相違点・新規な点

 我々は、ボランティアの人から得た毛髪と毛包から脂質成分を抽出し、さらに脂肪酸解析を行い、人の毛髪が必須脂肪酸が少なく、かつ、多量のパルミチン酸(40%以上)を有していることを見い出しました。
 
3.内容

 このパルミチン酸の毛髪・毛包への役割は不明ですが、今後の開発に大きく寄与するものと考えます。また、パルミチン酸そのものがグルコースから体内のあらゆる細胞内で生成さ
れる脂肪酸であることから、人への投与にあたって安全性と倫理性が高いと考えます。
 
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4.研究の適用分野

 研究適応:
  (1)毛髪の再生医療・・毛包細胞や毛乳頭細胞の培養添加物としての利用。
  (2)毛髪・毛包の長期保存研究・・男性型脱毛の手術的治療として単一毛包移植が行われていますが、長時間を要しますので、毛包の保存環境の改善が求められます。
  (3)育毛剤開発・・エビデンスに基づいた育毛剤の開発に脂肪酸は不可欠な因子と考えられます。
  (4)人工毛髪開発・・将来的な方向として、一再生医療としての毛包・毛髪付き皮膚再生のほかに安全な人工毛髪の開発が望まれます。

研究者  寺師 浩人
神戸大学医学部附属病院 形成外科 
神戸大学連携創造本部より

1型糖尿病患者末梢リンパ球自己免疫反応に関する研究

1.研究の概要とキーワード

 1型糖尿病は膵細胞抗原を特異的に認識する自己反応性T細胞によって惹起される臓器特異的自己免疫疾患と考えられています。1型糖尿病における膵細胞破壊は主にT細胞を介した細胞性免疫機構を介した機序であることから、末梢血中の自己反応性T細胞を検出、解析することが診断能を高め、さらに発症以前の予知に重要であると考えられます。本研究はヒト自己反応性T細胞の検出をGAD65、Proinsulin、IA-2抗原を用いて、感度が良く、しかもT細胞の性質の解析が可能なELISPOT Assay法の開発を行いました。
 

2.他の研究との相違点・新規な点

 自己免疫疾患の診断には従前より、自己抗体の検出が用いられてきたが、自己抗体陰性の症例が少なからず存在すること、自己抗体が検出されても発症に至らない症例が多く存在すること、また、抗体価が病態を反映しているか判断が困難であるなど問題点があった。我々の開発したELISPOT Assay法は自己抗体での問題点を克服し、T細胞を介した細胞性免疫機構を直接検出できるという利点があります。
 

3.内容

 患者末梢血からリンパ球を分離し、高分子物質を除去したヒト血清を用いた培養液を用いることにより、バックグラウンドを低減した抗原特異度の高いELISPOT法を開発しています。1型糖尿病患者の末梢血からGAD65、Proinsulin抗原に反応しIFN-gammaを産生するT細胞を同定しています(下図)。  


4.研究の適用分野

 1.抗原に反応するT細胞の同定。例えば結核菌に反応するT細胞を同定することによる診断など
 2.自己免疫疾患の診断1型糖尿病や自己免疫甲状腺炎など臓器特異的な疾患の診断に有用


研究者  永田 正男・横野 浩一
神戸大学医学・成育医学
神戸大学連携創造本部より

インスリン抵抗性改善剤の新規スクリーニング

1.研究の概要とキーワード

 脂肪組織は,その多寡により生体の糖代謝維持に重要な役割をもち,構成する脂肪細胞の大きさにより生体の糖代謝に与える影響が異なることが知られてますが,組織重量の違いは個々の細胞の大きさのみの違いだけでなく,細胞の数によっても説明されるべきものと考えらます。すなわち,肥満は遺伝的素因や生活習慣の関与が原因となりますが,それには個々の脂肪細胞が大きくなる以外に,増殖や分化によって脂肪細胞数が増加する機序が関与する可能性が推定されています。私たちは脂肪細胞数の低下を促進する物質が、インスリン抵抗性または潜在的インスリン抵抗性を改善し得る物質であることを見出しました。さらにインスリン抵抗性または潜在的インスリン抵抗性を改善し得る物質を開発するためのスクリーニング法として、脂肪細胞数の低下を促進する物質をスクリーニングすることにより、実施可能であることを見出しました。

2.他の研究との相違点・新規な点

 これまでに脂肪細胞数のインスリン抵抗性に対する役割についてはほとんど知られていませんでしたが、私たちは脂肪細胞数の増加が脂肪組織の肥大化を通して,糖尿病をはじめとするメタボリック症候群の原因の一つになっている可能性を発見し、この細胞数の制御
機構がインスリン抵抗性に重要な役割を果たしていることを永田_横野先生が明らかにしています。


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3.内容

 インスリン抵抗性または潜在的インスリン抵抗性を改善し得る物質を開発するためのスクリーニング法として、脂肪細胞数の低下を促進する物質をスクリーニングすることにより、実施可能であることから、私たちは迅速かつ簡易に薬剤による脂肪細胞数の低下効果をスクリーニングする方法の確立に取り組んでいます。
実際このようなスクリーニング法を用いてインスリン抵抗性または潜在的インスリン抵抗性を改善し得る物質を同定しております。

4.研究の適用分野

 本研究により見出された(潜在的)インスリン抵抗性改善剤は、肥満・インスリン抵抗性・糖尿病の予防・治療に有用であります。また本研究のスクリーニング法にて、インスリン抵抗性又は潜在的インスリン抵抗性を改善し得る可能性のある物質を実験動物に投与することで、迅速かつ簡易にスクリーニングすることが可能です。

研究者  阪上 浩・中村 武寛・春日 雅人
神戸大学医学・応用分子医学
神戸大学連携創造本部より

細胞膜受容体を分子標的とした新規抗体医薬の開発

1.研究の概要とキーワード

 創薬の最も理想的な標的分子として細胞膜受容体があります。私達は細胞増殖・分化の制御と発癌機構の解析において、α型PDGF受容体EphB6受容体CCK2/ガストリン受容体ヒト遺伝子を世界に先駆け同定し、その特許を取得(申請)してきました。

21世紀に入り抗体医薬の開発が飛躍的に進み、新しい抗がん剤や難治性疾患治療薬として臨床応用されています。私達は上記受容体に対する抗体医薬を新手法で開発し、抗癌剤免疫抑制剤血管新生阻害剤として臨床応用することを目指しています。

 1)Type αPlatelet-derived growth factor receptor gene.
   N&R Reference #14014.0279US filed May 11, 1995、国際公開番号WO90/10013(国際特許)
 2)タイプα血小板由来増殖因子レセプター遺伝子平成9年5月2日登録(特許第2640568号)
 3)ヒトコレシストキニンBレセプター 登録日平成15年8月15日(特許第3461852号)
 4)新規なヒト受容体型チロシンキナーゼ様たんぱく質 特許出願番号特願C082401N
  国際出願番号PCT/JP97/01887 Filed 1997/6/4
 5)EphB6受容体遺伝子ノックアウト動物およびその利用法 特許出願番号特願2002-287227

研究者  松井 利充・谷口 泰造
神戸大学 医学部附属病院 血液・腫瘍内科
神戸大学連携創造本部より

野生梨の有用形質の評価と利用 =新規芳香性物質の探索=

1.研究の概要とキーワード
 日本の食卓に並ぶ梨のほとんどが二十世紀、幸水、豊水といったニホンナシという種類です。江戸時代には2千種類を超える梨が存在していましたが現在ではそのほとんどが消失しています。またかろうじて残っっている在来系統や野生梨も激減しています。

 私たちはこれらの梨は貴重な「遺伝子資源」であると考え系統保存事業(野生梨ジーンバンク)を展開しています。梨遺伝資源の利用を目的に現在の栽培梨には見られない、または逸失したと考えられる有用形質を探索しており、特に果実の芳香性物質に着目して研究しています。


2.他の研究との相違点・新規な点

 現在のニホンナシ栽培品種には芳香を持つ系統は存在しません。農学部附属食資源教育研究センターの梨ジーンバンクには多様な芳香を持つ在来系統や野生梨が保存されています。ジーンバンクには世界中から収集された梨が保存されていますが、特に1998年より日本国内のフィールドから独自に収集された400以上の野生系統が含まれており、日本最大規模の野生梨ジーンバンクになっています。これらの芳香性物質の同定やその多様性を明らかにすることで芳香梨の品種改良のみならず加工食品や天然香料としての利用も期待されています。
 
3.内容

 岩手大学教育学部、菅原悦子研究室との共同研究として、ガスクロマトグラフィー(GC)、GC匂い嗅ぎ分析、GC-MS分析により果実に芳香を持つ在来系統や野生梨から揮発性物質を抽出し、主要揮発性(芳香性)物質の同定を試みています。これまでに数十系統の野生梨とニホンナシや芳香を持つ西洋ナシ、リンゴ果実との間で揮発性成分を比較したところ、いくつかの野生梨に特異的な芳香物質が見つかっています。現在野生梨特異的な芳香物質の同定、その多様性について研究を進めています。


4.研究の適用分野

 本研究により新規芳香性物質が明らかになれば、天然香料としての利用が期待されます。また芳香梨ワインや梨酢などの加工食品としての利用も期待できます。今年度は洋菓子の材料としての利用を試みています。


研究者  片山 寛則
神戸大学 農学部附属食資源教育研究センター
神戸大学連携創造本部より

丹波黒大豆の組織培養

1.研究の概要とキーワード

 私たちは様々なダイズの品種判別をしたり、組織培養でクローン苗を作ったりする研究を行っています。特に注目しているのは、黒豆の最高級品、丹波黒大豆(丹波黒)です。
 丹波黒大豆の中にもいくつかの種類があり、兵庫県では「兵系黒3号」という系統の栽培
を推奨しています。


2.他の研究との相違点・新規な点

 今まで黒大豆の組織培養に関する報告はなく、扱うことは難しいと考えられていました。しかし私たちの実験の結果、丹波黒大豆(兵系黒3号)は、組織培養実験のモデル品種といわれている”JACK”と同等か、それ以上の再分化能(体細胞組織から新しく独立した植物体を再生する能力)を持つことがわかりました。

 このことは、丹波黒大豆の組織培養技術が、クローン苗増殖ばかりでなく、品種改良や学術的研究にも多いに役立つ可能性があることを示しています。 


3.内容

 組織培養によるダイズの植物体再生には大きく分けて下に示した2通りの方法があり、どちらの方法も利用可能であることがわかってきています。現在、兵系黒3号を用いて様々な培養条件を検討し、さらなる再分化効率の上昇と、多くの再生植物の中から突然変異体を発見することを目標として研究を続けています。


4.研究の適用分野

  丹波黒大豆は現在大変人気がありますが、栽培に手間がかかること、成熟時期の調整が難しいこと、中国など海外からの疑似製品輸入などが障害となって、日本での作付け面積の上昇が頭打ちになってきています。この研究は、私たちが並行して行っているDNA解析や微量分析解析による品種・産地判別の研究とともに、現在直面している諸問題に対処するための栽培方法の改良や新品種の育成に貢献することを目指しています。

研究者  畠中 知子 
神戸大学 農学部 植物資源学科
神戸大学連携創造本部より

収穫後青果物の省エネ・低コスト貯蔵法の開発

1.研究の概要とキーワード

青果物は収穫後も生きています。

したがって、我々が収穫後、野菜や果物を利用すると鮮度や品質の低下はまぬがれません。 低温流通や低温保蔵は青果物の品質保持には有効な手段ですが、多大な電気エネルギーや大型の冷蔵貯蔵庫(車) などの設備が必要です。先進国(地域)ではこれも可能ですが、途上国(地域)では生産された青果物の多くは利用されることなく、 むだに破棄されています。

途上国での人口増加による食料不足や、またエネルギー多用による地球環境の悪化を考える時、青果物安全、 かつ省エネ・低コスト流通・貯蔵できる方法を開発することは急務であると考えます。

これらの方法の実用化は先進国などでもコスト削減など、経済効果を生み出すものと確信しています。我々はこの目的遂行のため、 簡便な処理による青果物品質保持法について、その農産物の特性や機構などを研究しています。

2.他の研究との相違点・新規な点

 「安全」、「簡便」、「省エネ・低コスト」な貯蔵法を目指しています。

 
3.内容

1) エタノール蒸気処理および一時的熱処理によるブロッコリーの緑色および品質保持について、緑色保持機構の解明と実用化試験。

2) 1-MCP(1-メチルシクロプロペン)処理による、バナナやウメ果実の追熟抑制、スダチ果実の緑色保持に関し、その機構の生理学的研究と実用化試験。

3) 安全なコーティング剤を用いた熱帯果実の品質保持のための実用化試験。


4.研究の適用分野

青果物の流通関係(輸入、国内)、青果物の鮮度保持剤および関連資材(プラスチックフィルムなど)、青果物の貯蔵設備および冷蔵庫の開発


研究者  寺井 弘文

神戸大学 農学部 植物資源学科

神戸大学連携創造本部より

野菜でテスト

1.研究の概要とキーワード
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 野菜の基本的な姿形は遺伝的要因により決定され、生長は水、光、空気、土壌などの様々な環境要因に影響を受けます。これまでの農業の長い歴史の中で、農家の方々の努力によって様々な野菜の栽培方法が培われてきました。しかしながら、野菜の収量増加・商品価値の向上・サイクルの短縮・労働の省力化などを向上させる未知の要因はまだ存在すると考えられます。
遮光材・発光ダイオード(LED)・機能水(磁気水など)・産廃リサイクル肥料など、ご提供いただいたアイデアや材料をもとに実験を行い、野菜に効果があるかを判断します。


2.他の研究との相違点・新規な点

 この調査は、いわゆる農薬試験や肥料試験とは異なり、野菜の収量と品質を調べることに主眼をおいています。したがって、正の効果が認められた場合は、野菜の生産者に対して効き目を直接アピールすることができます。また、企業・生産者・研究者が情報を共有することにより、さらに効果的な栽培方法などのアイデアが得られる可能性があります。
  

3.内容 

 依頼者から相談を受けた後、文献調査を行い、過去の研究例を調べ、研究室内で課題の検討を行います。その結果、研究可能と判断した場合には実験計画・コスト・期間を提案します。それらの条件に依頼者が同意した上で試験を開始します。実際には、圃場栽培・制御室栽培・組織培養などの方法により野菜を育て、その収量・品質を調べます。得られたデータから慣行法と比較して有意差があるか統計学的に解析を行い、実用性があるかを検討し、報告書を提出します。
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4.研究の適用分野

 この調査研究は、農業分野はもちろん、野菜に対して効果を与えると考えられるものを生産している工業分野にも適用できます。既に実際の農家などの生産現場において栽培に使用されていても、実証データが無く、生産者向けのより詳細な情報を得たい場合にも適しています。

研究者  宇野雄一・金地通生・稲垣昇
神戸大学 農学部 植物資源学科
神戸大学連携創造本部より

JB6細胞を用いた発がん予防食品成分の検索

1.研究の概要とキーワード

発がんプロモーション阻害効果という観点から、さまざまな食品成分発がん予防効果をマウス正常表皮由来JB6細胞をもちいて研究しています。


2.他の研究との相違点・新規な点

発がんは大きく分けて3つのステップから起こります。
  ① DNAに変異が起こるステップ
  ② 変異を起こした細胞が増殖を開始するステップ(発がんプロモーション)
  ③ がん組織が形成されるステップ

これまでのがん予防研究は①と③が中心でした。しかし、①は日常頻繁に起こるステップで十分な予防は不可能です。③は日頃心がける予防としては遅すぎます。そこで正常な細胞が異常細胞になり増殖することを抑える②のステップに注目しました。
これまで、②のステップを研究するにはソフトアガー法という方法が用いられましたが、これには2-3週間かかりました。本研究で用いる方法では数日間で終了します。
 

3.内容

がん細胞は発がんプロモーターにより培養液中で半永久的に培養することができます。これに対し、正常細胞は、通常の培養液中では増殖しません。しかし、正常細胞を用いた発がんプロモーション阻害の研究では、正常細胞の培養は不可欠です。

そこで正常細胞でありがなら培養液で培養することができるマウス正常表皮細胞由来のJB6細胞を使います。
① JB6細胞に少し手を加えることで、通常の正常細胞と同じ休止状態にします。
② 発がん予防効果を調べたい食品成分を添加します。
③ 発がんプロモーターを添加し、細胞増殖を促します。
④ 細胞の増殖をフローサイトメーターにより解析します。


4.研究の適用分野


研究者  橋本 堂史
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

果物は有用タンパク質の宝庫である

1.研究の概要とキーワード

 果物のタンパク質については、糖化と果肉の軟化に関わる酵素を除いては、これまであまり研究対象にはなっていませんでした。
しかし、パパインやブロメラインといったタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)は古くから知られており、今日でも、食品,医薬品などの製造に利用されていますが、その数はごく限られています。一方、とは糖鎖と特異的に結合するタンパク質であるレクチンは、医療分野や研究試薬として利用されています。
しかしその多くは、マメ科植物に由来し、果実を起源とするものはほとんどありません。我々は。この2つのタンパク質について、特異性や物理化学的性質の異なったものの探索と解析を進めています。


2.他の研究との相違点・新規な点

 なぜ果物なのか・・・食品工業や医薬品では、使用する酵素などの「安全性」は極めて重要な要因です。果物は我々が古くから利用してきたもので、その多くが「生で」食べることができます。すなわち、果実に由来する物質で、有害なものはないといえます。 一方、果物のタンパク質含量は、通常3%以下と低く、多くの穀物と異なって、あまり研究されていません、言い換えると、我々にとって有用なタンパク質が、まだまだ手付かずでいる可能性があります、特に、我々が注目しているのは、熱帯・亜熱帯果樹です。これらは、温帯果樹と異なり、品種改良が遅れているため、逆に形質が収斂してないという長所があります。


3.内容

 プロテアーゼに関しては,種々の果実から粗精製を行い、その特性の比較を行っています。現在、レンブ、ピタヤ、アセロラなど多数の果実の熟果に活性を認めており、その物理化学的特性の検討を行っています。

 レクチンに関しては、これまで,ニホングリからマンノース/グルコース結合性レクチンの単離・精製・クローニングを行いました。その結果、ニホングリレクチンは、アミノ酸配列の相同性が高い、2つのドメイン(N-ドメイン,C-ドメイン)から成ることがわかりました。この結果から、ニホングリレクチンは2つの糖結合部位を持つと考えられます。また,オリゴ糖レベルでの結合特性の比較を行った結果、本レクチンはN-結合型糖鎖の中核構造であるMana1-3[Mana1-6]Manを強く認識することがわかりました。現在、結晶化とそれに続く構造解析を進めると共に、種々の変異体を用い、特異性の異なる新規レクチンの作出を試みています。
 

4.研究の適用分野

 上でも述べたように、本研究成果は食品、医薬品、化粧品など、広範囲な適用が可能となります。また、特異性を改変した多価レクチンなどは、試薬あるいは臨床検査にも利用できると考えています。


研究者  野村 啓一
神戸大学 農学部 植物資源学科
神戸大学連携創造本部より

バクテリア型イノシトール分解経路の解明とその応用

1.研究の概要とキーワード

 イノシトールが我々の体内で分解利用されることは稀で、むしろその欠乏が脂肪肝、脱毛、鬱病などの不都合を起こす程です。ところがバクテリアには効率的なイノシトール分解経路があります。このバクテリア型イノシトール分解経路の遺伝子を応用すると、イノシトール強化納豆や、糖尿病改善効果のあるイノシトール異性体が作れます。また、大豆根粒菌の感染力を高めて窒素肥料を削減できる可能性もあります。


2.他の研究との相違点・新規な点

 カテキン高含有茶は体脂肪低下や脂質代謝改善の目的で特定健康食品に指定されているが、カテキンの分子機構は明確ではありませんでした。私たちの研究では、カテキンは脂肪細胞の分化抑制や筋肉と脂肪組織のGLUT4の機能調節を介して肥満や糖尿病の予防・改善に関わっていることを明らかにしました。[特開2003-095942、特願2004-150036]


3.内容

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 インスリンは上の図のような作用機構で筋肉や脂肪組織におけるGLUT4の細胞膜上へのトランスロケーションを誘導します。
カテキンは筋肉において、インスリンとは異なる作用機構でGLUT4のトランスロケーションを起こすため、Ⅰ型ならびにⅡ型糖尿病モデル動物の血糖値上昇を抑制しました。一方で、カテキンを含む茶は、脂肪組織においてインスリンによるGLUT4のトランスロケーションを抑制するとともに、脂肪細胞の分化に関わる転写因子の発現を抑制しました。
このように、カテキンは筋肉や脂肪組織という末梢組織へのグルコース供給を調節することで生活習慣病の予防・改善に関わっています。
今後、このような機能を有する新たな食品成分の探索と、その作用機構の解明を目指しています。


4.研究の適用分野

研究適用分野:機能性食品の開発、肥満予防・糖尿病予防薬の開発
産学連携で希望すること:共同研究、マッチングファンド等の競争的資金獲得、商品開発


研究者  吉田 健一
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

食品成分によるグルコース輸送担体の機能調節

1.研究の概要とキーワード

 筋肉と脂肪組織に特異的に存在するインスリン応答性グルコース輸送担体(GLUT4)は、血糖調節に関わるため、食品成分によるGLUT4の機能調節は肥満や糖尿病の予防・改善につながります。


2.他の研究との相違点・新規な点

 バクテリア型イノシトール分解経路は、枯草菌ゲノム情報を詳しく研究することによって初めて明らかになった全く新しい代謝経路です。本研究は発表者独自の研究であり、類似の研究は国際的にみても皆無です。また、この分解系の応用を遂行することができるのも発表者のみであり、本シーズは総じて新規です。


3.内容

 発表者が明らかにしたバクテリア型イノシトール分解経路を部分的に応用すると、安価なミオ-イノシトール(MI)を変換して、2型糖尿病や多嚢性卵巣症(不妊症の一種)の症状改善効果を持つが非常に高価なD-キロ-イノシトール(DCI)を安価に生産できます。(図1)

32_01.gifMI自体も脂肪肝、脱毛、鬱病の抑制など我々の健康に役立つ効能を持っています。
納豆の原料である大豆には本来MIが含まれているのだが、納豆の発酵生産に用いられる納豆菌にもバクテリア型イノシトール分解経路があるので、納豆の製造過程でMIはほとんど消費されています。そこで、納豆菌のイノシトール分解系を担う遺伝子を不活性化すると、MI含量を強化した納豆を作り出すことができると期待され、既に健康食品とされる納豆が一層注目される可能性があります。(図2)     
          
32_02.gif一方、大豆根粒菌においては、イノシトール分解経路が効率的な根粒形成に必要であることが示唆されています。根粒菌が大豆の根に形成する“根粒“という器官は、大豆に根粒菌が感染して細胞内に入り込み、共生関係を樹立して出来上がります。そして根粒内に生息するようになった根粒菌は空気中の窒素をアンモニアに変換して、大豆の生育に必要な窒素分を供給するようになります。

32_03.gifつまり、大豆はタンパク質などを作るために必要な窒素源を、空気中から取り入れることができます。根粒菌のイノシトール分解系を強化すれば、根粒形成がより活性化される可能性があり、これによって窒素肥料の削減による環境保全や、大豆の増産が期待できます。(図3)


4.研究の適用分野

 本研究は、発酵産業への適応側面が強い。生理活性のあるDCIの生産や、発酵食(納豆)のミオーイノシトール含量の強化など既に企業との連携が始まっています。


研究者  芦田 均
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

食品成分によるダイオキシン毒性の抑制

1.研究の概要とキーワード

 環境汚染物質であるダイオキシン類は主に食品と共に体内に暴露され、アリール炭化水素受容体(AhR)の形質転換を介してさまざまな毒性を発現します。したがって、AhRの形質転換を抑制する食品中に含まれる成分を明らかにすることは、食の安全確保の上で重要な課題です。

2.他の研究との相違点・新規な点

 ダイオキシン毒性発現の初発段階を担うAhRの形質転換についてと、形質転換を促すアゴニストの解明については多くの研究があります。一方で、食品成分によるダイオキシン毒性の防除に関する研究は少ない。我々は、茶成分によるAhRの形質転換抑制について明らかにするとともに [特開2001-348382] 、簡便な新規AhRの形質転換測定法についても開発しました[特願2002-057516] 。


3.内容

 ダイオキシン類は上の左図のような作用機構でAhRの形質転換を促し、毒性を発現します。この形質転換に対して、食品に含まれる成分(Food factor)の抑制効果を我々が開発したSW-ELISA法(上の右図)を用いて探索することが可能です。また、生体内での有効性を評価するための培養細胞を用いた腸管透過モデル系実験や動物個体を用いた実験も実施しています。さらに、有効成分については、それがダイオキシン類とAhRとの結合を阻害するのか、AhRの核内移行を阻害するのか、または、核内での転写因子としての作用を阻害するのか、などの作用機構解明を目指しています。


4.研究の適用分野

研究適用分野:ダイオキシン毒性阻止剤の開発、食の安全性確保技術の開発
産学連携で希望すること:共同研究、マッチングファンド等の競争的資金獲得、商品開発


研究者  芦田 均
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

小腸を介した免疫賦活に関与する活性酸素種はなに?

1.研究の概要とキーワード

 小腸上皮細胞様セルラインCaco2細胞とマクロファージ様セルラインRAW274.7を用いた共培養系による免疫賦活物質および抗酸化物質の検索


2.他の研究との相違点・新規な点
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キノコ由来多糖の抗腫瘍性は、宿主介在による免疫応答系細胞賦活に帰因しますが、現在そのスクリーニングには、担がんマウスによる動物実験が主な方法となっています。
我々は、食品素材としてのキノコの特性をより明確にするため、経口摂取した状態を想定した小腸上皮細胞とマクロファージの共培養系(右図)を新規スクリーニング法として開発し、それを用いて、キノコ成分による免疫賦活化は、小腸細胞とマクロファージとの間での情報伝達において、活性酸素が重要な役割をしていることを見いだしました。


3.内容

○マクロファージから産生される腫瘍壊死因子(TNF-a) は、活性酸素を介したシグナルトランスダクションが関与しています。そこで、スーパーオキサイドを消去する酵素であるSODと、過酸化水素(H2O2)を消去する酵素であるCATを基底膜側に添加し、どちらの活性酸素種がマクロファージの賦活化に関与するのか調べました。その結果、CAT濃度200U~50U/mlまではTNF-a 産生は90%以上阻害されましたが、同条件で SODを添加した際には、 TNF-a 産生は全く阻害されませんでした。この結果より、小腸上皮細胞は、レンチナンの刺激によりH2O2を産生し、このH2O2がマクロファージを刺激し、TNF-a 産生を誘導していると示唆されました。しかしながら、直接マクロファージをH2O2で刺激しただけでは、TNF-a 産生は増強されないことを考慮すると、小腸を介した活性化経路には、H2O2以外にも必要な因子が存在している可能性が考えられます。

○この系を用いることで、抗酸化能を評価できることも明らかとなりました。すなわち、一つの系で、食品中に抗酸化能および免疫細胞活性化能を示す物質が含まれているかどうかを確認できます。


4.研究の適用分野

 この系を用いると、免疫細胞を活性化する食品成分をスクリーニングすることができると共に、活性酸素種である過酸化水素を消去する作用、いわゆる抗酸化性も同時に検討することが出来ます。
適用分野:機能性食品、健康食品素材希望:キノコの面白さを探求したい会社の方は、ご相談ください。


研究者  水野 雅史
神戸大学 農学部 植物資源学科
神戸大学連携創造本部より

タンナーゼ産生性乳酸菌の茶カテキン薬理効果に及ぼす影響に関する研究

1.研究の概要とキーワード

 緑茶に豊富に含まれるカテキンは、強力な抗酸化作用をもつポリフェノール類として近年注目されています。これらの物質について、主に抗酸化活性に由来するさまざまな薬理効果が研究・報告されていますが、ヒトの消化管内における代謝や動態について腸内細菌叢との関わりは未だよく分かっていません。そこで、ヒト糞便や植物性発酵食品よりカテキンを分解する可能性のあるタンナーゼ産生性乳酸菌群を新たに分離し、これらの乳酸菌群が茶カテキンの薬理効果に及ぼす影響の解明を目指し研究を行っています。


2.他の研究との相違点・新規な点

 近年、緑茶やワインに含まれるポリフェノール類(エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートといった分子内にフェノール性水酸基を複数もつ化合物)の抗酸化性による発癌抑制作用が注目されていますが、これらの物質のヒトの消化管内における実際の動態については未だ不明な点が多くあります。当研究室ではこれまでに、ヒト糞便あるいはキムチや糠漬けといった発酵食品より、ポリフェノールの一種であるタンニン酸をタンナーゼによって加水分解し、さらにその分解産物である没食子酸を抗酸化性の強いピロガロールまで代謝する乳酸菌群を多数分離し、これら乳酸菌の分類学的位置づけおよび生理活性を調べてきました。

この研究成果をふまえ、「ポリフェノール類の発癌抑制作用は腸内細菌叢の働きで産生されたより抗酸化力の強い代謝産物に真の作用があるのではないか?」という仮説を立てました。本研究課題はこの仮説を検証するべく、所謂「善玉菌」と称されるこれらの乳酸菌群の発癌抑制における新たな有用性について培
養細胞を用いて詳細に解析し、最終的にin vivo実験系により検証していきます。 
 
3.内容

 これまでにヒト糞便や発酵食品より分離したタンナーゼ産生性乳酸菌群の分類・同定作業を行った結果、タンナーゼ活性を有する細菌はそれまで報告されていた菌種だけでなく、乳酸桿菌科の細菌に広く分布する特徴であることが示唆されました。またこれら乳酸菌群のほとんどが、タンニン酸を代謝した最終産物にピロガロールを生成することが明らかとなりました。実際に茶カテキンのうち最も抗酸化性の強いと報告されているエピガロカテキンガレート(EGCg)を添加した培地でタンナーゼ産生性乳酸菌を培養すると、没食子酸が産生されることからこれらの乳酸菌によりカテキンが分解されることが明らかとなりました。現在、タンナーゼ産生性乳酸菌がEGCgを分解することで、その抗酸化性にどのような影響を及ぼすのか培養細胞を用いて調べています。
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4.研究の適用分野

 この研究は緑茶飲料や植物性発酵食品など食品分野への適用となります。この研究で確立を目指している乳酸菌と培養細胞との共培養系は、腸内細菌と宿主の関係を調べる手
段として有用であると期待されます。

研究者  大澤 朗
神戸大学 農学部 応用動物学科
神戸大学連携創造本部より

本当に効く機能性食品の開発戦略

1.研究の概要とキーワード

 多様な機能性食品が市販されていますが、そのほとんどがヒトでは有効ではありません。
成分が、吸収時に代謝・抱合されて、体内では生理活性を失うからです。そこで、体内でも有効な機能性成分を見出す戦略、または有効な生理活性を示すことができるようにデザインする戦略を確立しました。


2.他の研究との相違点・新規な点

 食物に含まれる機能性成分は、270万種類といわれます。そのすべてを同定・定量する手法と、ライブラリーを持っています。その中からヒトが摂取した場合に有効なものだけを選択する研究戦略を確立しました。


3.内容


4.研究の適用分野

 食品・薬品関連企業

研究者  金沢 和樹
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

新規バイオレギュレーター

1.研究の概要とキーワード

 ・脂肪酸代謝産物合成
 ・フラボン類合成
 ・有機リン化合物合成

2.他の研究との相違点・新規な点

 ・構造活性相関研究による新規バイオレギュレーターの創製
 ・新合成手法の開発


3.内容

 ・脂肪酸代謝産物の合成
 脂肪酸代謝産物が生体内での様々な生物活性発現にかかわっていることはよく知られています。最近合成したωー1ヒドロキシラウリン酸(図1)を植物に処理すると抗菌力がないにもかかわらず、ウドンコ病の発生を抑えることがわかりました。これは、この化合物が植物の病害に対して抵抗性誘導作用を有するからだと考えています。
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・フラボン類の合成
   アミノフラボン類の新規合成法(図2)を開発し、特許出願しました。

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・有機リン化合物の合成
   不斉誘起による有機リン化合物の合成法や光学活性リン化合物を利用したアルコール類の光学分割法の開発に取り組んでいます。
   

4.研究の適用分野

  分野:化学工業、医農薬 


研究者  佐々木 満 
神戸大学 自然科学研究科
神戸大学連携創造本部より

微生物酵素を用いた浴室等を汚染するカビメラニンの除去

1.研究の概要とキーワード

 浴室や台所の流し台を汚染する黒カビ(メラニン色素が原因物質)を微生物酵素を用いて除去します。


2.他の研究との相違点・新規な点

 1)塩素系洗剤を使用する際生ずる塩素ガスの発生を伴いません。
 2)メラニンに特異的に作用します。
 

3.内容

 1)浴室、流し台汚染の主な原因は黒カビの生産するメラニンです。
 2)微生物の生産するメラニン分解酵素を用いてメラニンを分解し、脱色します。
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 3)メラニンの分解・脱色は常温で進行し、有害物質は生成しません。


4.研究の適用分野

  化粧品、洗剤


研究者  青木 健次・竹中 慎治 
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

微生物酵素を用いたキノン類の還元、活性酸素生成の抑制

1.研究の概要とキーワード

  微生物の生産する2-ヒドロキシ1,4-ベンゾキノンレダクターゼ用いたキノン類の還元、活性酸素生成の抑制


2.他の研究との相違点・新規な点

 1)微生物酵素を用いた還元反応。
 2)還元反応と共に、活性酸素の生成を抑制する機能を持ちます。
 3)本酵素反応に際して、NADH等の補酵素を添加する必要がないので、反応液の
   組成を単純化できます。


3.内容

 
 1)2-ヒドロキシ1,4-ベンゾキノン(Ⅰ)を還元し、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン(Ⅱ)を
   生成する酵素を用います。
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 2)本酵素の用途:酸化物の還元、酸化防止剤


 3)スーパーオキシドジスムターゼ活性も有するので、活性酸素の生成を抑制するだけで
  はなく、活性酸素の消去も可能です。


4.研究の適用分野

  食品


研究者  青木 健次・竹中 慎治 
神戸大学 農学部 生物機能化学科 
神戸大学連携創造本部より

排水中の硝酸塩、アンモニウム塩の同時除去法

1.研究の概要とキーワード

  微生物を用いて排水中の硝酸塩、アンモニウム塩の同時除去を行います。


2.他の研究との相違点・新規な点

  1)単一の菌株を用いて硝化・脱窒を行います。
  2)好気条件下で処理を行います。
  3)従属栄養微生物を用います。


3.内容

1)従来の窒素排水処理法
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2)本研究で開発を目指す窒素排水処理法
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4.研究の適用分野

   環境浄化


研究者  青木 健次・竹中 慎治
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

トランスポゾン変異株を用いたアニリン類からカテコール類の合成

1.研究の概要とキーワード

 アニリン資化性菌トランスポゾン変異株を用いて、13種類のアニリン誘導体からそれぞれ対応するカテコール誘導体を合成します。

2.他の研究との相違点・新規な点

 1)単一のバッチで13種類のアニリン誘導体に作用してカテコール誘導体を合成します。
   反応は定量的に進行します。
 2)有機化学的合成法では困難な3-クロロカテコールを2-トルイジンから選択的に合成できます。

3.内容

 2-クロロアニリンから3-クロロカテコールの選択的合成(図)が可能です。
4-クロロカテコールは染料としての用途があるが、3-クロロカテコールの用途は未だ知られていません。
 
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4.研究の適用分野

  化学工業

研究者  青木 健次・竹中 慎治 
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

微生物酵素を活用した芳香族化合物からピコリン酸類の合成

1.研究の概要とキーワード

   微生物の生産する2-アミノフェノール ジオキシゲナーゼを用いて、一段階反応で2-アミノフェノール類からピコリン酸類を合成します。


2.他の研究との相違点・新規な点

 1)新規酸素添加酵素を利用した単環式芳香族化合物の複素環式芳香族化合物への変換反応。
 2)非酵素的不可逆反応を含むため、反応は100%の収率で進行します。


3.内容

 1)本酵素(2-アミノフェノール 1,6-ジオキシゲナーゼ)は、1 molの2-アミノフェノールあたり1 molのO2を吸収して、2-アミノムコン酸 6-セミアルデヒドを生成する反応を触媒します。
 2)生成した2-アミノムコン酸 6-セミアルデヒドはspontaneously(非酵素的)にα-ピコリン酸に変換されます。α-ピコリン酸は、農薬をつくるときの中間体として使用されています。


                           

3)本酵素は広い基質特異性を有し、 2-アミノフェノールの他に2-アミノ-4-クロロフェ ノールなど各種の2-アミノフェノール誘導体に作用して、対応するピコリン酸誘導体を生成します。


4.研究の適用分野

  化学工業


研究者  青木 健次・竹中 慎治
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

低温活性酵素の構造・機能相関性の解明

1.研究の概要とキーワード

 極限環境生物である好冷菌が産生する酵素(低温活性酵素)は、通常の酵素が活性を示
さない低温域(0~15℃)で効率よく機能します。
本研究では、低温での活性発現を可能とする構造的特性を明らかとし、将来的に、低温
活性能を附加した新規酵素の設計・開発を行います。

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2.他の研究との相違点・新規な点

 酵素は、ⅰ)環境汚染をもたらさないこと、
       ⅱ)安価であること、から
その工業的利用は拡大すると予想できます。


3.内容

 南極の巻貝から単離した好冷性細菌(Shewanella sp.)が作り出す脱リン酸化酵素(プロテインーチロシンーフォスファターゼ[CAPTPase]、アルカリフォスファターゼ)に着目して、柔軟性の高い構造の維持に必要な構造要因の解明を目的としました。
                  

                            
4.研究の適用分野

 低温活性能を附加した酵素を利用することで、「低コスト・環境調和型」な生産過程を可能とします。皆様の酵素利用における「ニーズ」をお聞かせください。


研究者  鶴田 宏樹
神戸大学 連携創造本部
神戸大学連携創造本部より

藻類を用いた有用物質生産への青色LEDの応用

1.研究の概要とキーワード

 本シーズは、栄養源の枯渇、温度上昇といった環境ストレスに起因して誘導生産される抗酸化物質の一種、アスタキサンチンの新規誘導法です。本研究では、近年利用可能となった近紫外光を発する紫~青色LEDを用いた光照射が、アスタキサンチンを多量に蓄積し得る微細藻類として知られているヘマトコッカス・プルビアリスで、さらにアスタキサンチンの蓄積を増進できることを明らかにしました。

2.他の研究との相違点・新規な点
 ヘマトコッカス・プルビアリスによるアスタキサンチン生産では、アスタキサンチンの細胞内蓄積量が、従来、乾燥細胞重量の約3%程度とされてきました。本研究では、紫~青色LEDを利用し、特定波長光の有する生理的作用の検討を通して、アスタキサンチン蓄積が従来と比べ、およそ2倍程度高い、6%強に達しうることを見出しました。
 
3.内容
 ヘマトコッカス・プルビアリスによるアスタキサンチン生産では、細胞が増殖する増殖期とアスタキサンチンを生合成する誘導期とが区分され、生産プロセスが2段階となる煩雑さがあります。このようなプロセスでアスタキサンチン生産性の向上には、効率的に誘導を行うことが不可欠です。我々は、青色LED光のもたらす生理的作用、すなわちアスタキサンチンの高度蓄積化を活用して、効率的な培養生産プロセスの構築を試みています。

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4.研究の適用分野
 健康食品産業

研究者  勝田 知尚 
神戸大学 工学部 応用化学科
神戸大学連携創造本部より

葉緑体機能とマクロアレイの活用

1.研究の概要とキーワード

  葉緑体は光合成で光エネルギーを生命活動エネルギーに変換するだけでなく、多様な物質を代謝、合成しています。それらを我々は食料、医薬、工業原料として利用しています。私は葉緑体の転写と翻訳機能の分子基盤を研究しており、これらの装置の改良で生産性の向上や培養細胞による有用物質生産に役立てようと考えています。

また近年、医療分野を中心にマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析が広まっているが、食品関連分野でも安価で簡便なメンブレンフィルターを使ったマクロアレイで、野菜の生育診断、病虫被害把握、品種開発等を遺伝子発現プロファイルを指標に可能にすること
を目指した研究も進めています。

2.他の研究との相違点・新規な点
  植物生産性の向上は核ゲノムに有用遺伝子を導入して細胞質で発現させたり、有用遺伝子の改変や至適化により試みられているが、葉緑体を精密なナノマシンが集積した高生産性ミクロ工場と捉え、その転写、翻訳装置自体の理解と改良に視座を置いている点がユニークです。また一回の解析に数万円かかるマイクロアレイは医療分野ではコスト効果があるが、食料生産分野では現実的ではありません。これをマクロアレイやスリップアレイ(小型マクロ)で実現しようとしている点が他と異なります。

3.内容

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4.研究の適用分野
  植物培養細胞葉緑体をナノマシンが集積したミクロ工場として活用した有用物質の生産。蛋白質や有効成分をより多く含む野菜の開発しました。マクロアレイを活用したアブラナ科の野菜(白菜、キャベツ、大根、カイワレ、カラシナ等)の生育診断、病虫被害把握、品種開発等です。産学連携で生産現場やマーケットのニーズやノウハウをつかみ、実際に役立つものづくりを模索していきたいと考えています。

研究者  金丸  研吾
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

トランスジェニック植物による有用タンパク質の大量生産

1.研究の概要とキーワード

 果実タンパク質(メロン・ククミシン)が果実特異的に大量蓄積するメカニズムを利用して、異種有用タンパク質を果実に大量発現させる技術を開発します。

2.他の研究との相違点・新規な点
 果実をタンパク質生産工場と捉え、異種有用タンパク質遺伝子を果実に大量発現・蓄積し、果汁に分泌させる技術は未だ確立されていません。果汁中の内在性タンパク質の種類や量は限られており、果汁からこれらの異種タンパク質を精製することは容易です。安全性も高く、実用化の可能性は高いと考えられます。

3.内容
 果実をタンパク質大量生産工場と捉え、人類にとって有用なタンパク質を大量生産・蓄積させてそれを抽出利用する技術の確立を図ります。
 まず、果実でのみ大量発現するククミシン遺伝子の果実特異的発現調節機構を転写レベルで解明します。特にプロモーター中のTGTCACAモチーフを含むエンハンサー配列とそれに結合するタンパク質(CmbZIP1)の相互作用が果実特異的大量発現を担っていることを明らかにします。さらにCmbZIP1の発現様式や転写因子としての特性を詳細に解析して、CmbZIP1がククミシン遺伝子のエンハンサー因子として機能していることを示します。
 次に、これらの機構を利用して、果実に経口ワクチンやインターフェロンなどの異種有用タンパク質を大量発現させる技術を開発します。すなわち、上記のエンハンサー配列/エンハンサー因子の組み合わせからなるシステムをトマトやスイカなどの果菜類作物に導入し、異種有用タンパク質を果実に多量発現させます。

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4.研究の適用分野
 適用分野:遺伝子組換え作物による異種有用タンパク質の生産

関連文献
J. Biol. Chem.、269、32725-32731、1994
J. Biol. Chem.、277、11582-11590、2002

研究者  山形 裕士
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

吸血性ダニ由来生理活性物質の探索

1.研究の概要とキーワード

  吸血性節足動物(蚊・ダニ等)に吸血されると、「痛い、痒い」の他に「病原体の媒介」が起こるなど私たちにとって困ることが多く、これらは嫌われ者です。しかし、見方を変えるとこれらは私たちにとって大変有効な生物資源かも知れません。すなわち、吸血性節足動物の唾液には吸血を容易にするため、血液凝固、免疫応答、血管収縮等を阻害する様々な生理活性分子が含まれており、これらは医薬資源となる可能性を秘めています。そこで私たちは吸血性ダニ唾液腺遺伝子の大量解析を行い、多数の生理活性分子を同定して医薬素材へと応用することを目標として研究を行っています。

2.他の研究との相違点・新規な点
  唾液腺に含まれる生理活性分子を遺伝子大量解析により探索する試みはこの研究の最も新規かつ特徴的な点です。

3.内容
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4.研究の適用分野
適用分野:医薬開発、研究試薬開発
産学連携で希望すること:同定した生理活性分子の実用化への可能性を見極めることです。

研究者  岩永 史朗
神戸大学 農学部 生物機能化学科

神戸大学連携創造本部より

N-アセチル転移酵素(NAT)をターゲットにした害虫防除と昆虫機能利用

1.研究の概要とキーワード

 昆虫はこれまでサイズの限界によって資源的価値が過小評価されてきたが、分子生物学的な技術の発展により、この問題が克服されつつあります。そうなると、昆虫の多様性は欠点から大きな利点に転化します。また、特殊性を利用することも可能になってきます。

NATは様々な生物で大事な生理機能の調節にかかわっているが昆虫ではその役割が特に重要です。この系を撹乱させることによって新しい害虫防除の方策が得られるでしょう。 また、NATは様々な環境情報の制御を受けるから、これらの環境情報の生物的指標として、環境汚染物質などのモニターに使えるのではないかと考えられます。

2.他の研究との相違点・新規な点
 NATが昆虫でクチクラ形成に関ること神経伝達物質の要のモノアミンの代謝に関ることが知られていましたが、我々はこれまでに、卵巣発育と生殖に伴う行動の制御、中腸の細胞増殖の制御、脂質代謝などに関ることを明らかにしました。(図1)
 このような広範な生理機能を有する酵素を撹乱すれば害虫防除が出来るはずです。
NATは昆虫で強い酵素活性を有しますし、その遺伝子もクローニングしたので基本的な知識を既に得ています。哺乳類のものとは酵素特性も違います。殺虫剤開発はこれまで、個体をターゲットにしていたため効率的にも環境負荷の上でもコストが大きかった。
それを特定の酵素にターゲットを限定することで、効率的なやり方が出来るでしょう。
NATは環境情報の入力が入ってくるところと考えます。
ダイオキシンの受容に通称PASタンパク質が関与するが、NATにもこれを受容するものがあります。 

3.内容
 1)NATをターゲットとするコンパウンド・スクリーニングを行います。(図2)
 2)NATは調節領域に多くのPASタンパク質が結合するE-boxを持っています。
   コーディング領域にルシフェラーゼ等のレポーターを結合し、cell line
   または適当な昆虫にtrnasfectionし、外来刺激・化学物質の検出に用います。

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4.研究の適用分野
  害虫防除、環境汚染物質のモニター

研究者  竹田  真木生
神戸大学 自然科学研究科
神戸大学連携創造本部より

昆虫中腸の機能性ペプチドの脊椎動物(ヒトを含む)機能調節への利用

1.研究の概要とキーワード

 昆虫の中腸は、消化・吸収だけでなく排泄、循環、代謝など重要な生理機能に関るほか、さまざまな生理活性ペプチドを含んでいます。我々は昆虫の中にさまざまな活性を持つペプチドを見つけました。そのうちの幾つかのものは、脊椎動物にも活性を有します。
それらのペプチドの利用の道を探ります。

2.他の研究との相違点・新規な点
 昆虫の制御物質を用いて、ヒトなどの機能制御をする新規ペプチドを探る試みはありません。

3.内容
  昆虫材料を用いペプチドを精製し、(1)マグヌス法、(2)セルラインを用いた細胞増殖、
分化、アポトーシス機能、(3)ラムゼー法による水・イオン透過能の促進・抑制などによる機能検索。
  脊椎動物におけるホモログの探索。
(1)上記のアッセイ法によるもの、(2)抗体による免疫的探索。
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4.研究の適用分野
  生理活性ペプチド

研究者  竹田  真木生
神戸大学 自然科学研究科
神戸大学連携創造本部より

土着天敵昆虫を活かして害虫を退治する

1.研究の概要とキーワード

 土着天敵の害虫制御機能が十分に発揮されるように、農耕地環境を総合的に管理するシステムを提案します。

2.他の研究との相違点・新規な点
従来の天敵利用は、外来天敵を導入して半永久的な防除効果を期待する永続的利用と温室などの閉鎖系に定期的に天敵を放飼する生物農薬的利用が主流でした。本研究では、開放系農耕地にもともと生息する土着天敵に着目して、その天敵としての機能を増強する
ために総合的かつ順応的な管理システムを開発します。

3.内容

殺虫剤中心の害虫防除がかかえる難問

 ・必ず進化する薬剤抵抗性。

 ・天敵群集の破壊によるリサージェンス(大発生)。

 ・農薬散布者にかかる身体的負担。

 ・払拭できない、化学物質への不安。

天敵利用がもつ潜在的な市場価値

 ・農薬に支払われる金額は、年間3500億円を超える。

 ・さらに、農薬を使用しない農産品には若干のプレミアムも期待できます。

しかし、従来の天敵利用には限界がある

 ・伝統的生物的防除-永年作物の侵入害虫にほぼ限られます。

 ・最近の生物農薬的利用-施設栽培(温室)などの閉鎖系に限定されます。

 ・開放系の農耕地(水田、畑、果樹園)では、積極的な天敵利用は少ないです。

天敵利用の新ビジョン

 ・天敵の生態や利用法については、すでに相当な研究蓄積がある(不十分ではあるが)。
   
  • 天敵が生息する環境の創出・修復

  •    
  • 天敵の餌資源などの供給・付加

  •    
  • 誘引剤など化学的方法による、天敵の定着促進

 ・天敵と協働可能な多くの技術(性フェロモン、光制御、選択性殺虫剤)が実用化しています。

 ・しかし、最大の問題は、そうした個別技術を農耕地環境に応じて適切に組み合わせ、順応的に運用するソフト技術が未成熟であることです。

 ・各経営体の実情に合わせて総合的な天敵管理システムを提案できるようになれば、そこに市場が現れるでしょう。

4.研究の適用分野
 環境アセスメント、経営コンサルタント、情報技術、緑化・造園

研究者  前藤 薫
神戸大学 農学部 生物環境制御学科
神戸大学連携創造本部より

発芽メカニズムに着目した根寄生雑草防除

1.研究の概要とキーワード

 我が国では現在のところ問題になっていませんが、世界に目を向けるとアフリカ、ヨーロッパを中心に、植物の根に寄生する雑草が農業に甚大な被害をもたらしています。

特に問題になっている根寄生雑草ストライガ(写真1)とオロバンキ(写真2)であり、前者はイネ科植物を、後者はマメ科、ナス科、キク科等幅広い植物を宿主とします。近年ではオーストラリアでも問題が深刻化しており、我が国への侵入も確認されています。根寄生雑草は独立して生きていけないため宿主植物が分泌する化学シグナル(発芽刺激物質)を感受してはじめて発芽します(図1)。本研究はこの発芽メカニズムに着目して根寄生雑草を防除する方策の開発を目指しています。

ストライガとオロバンキ

2.他の研究との相違点・新規な点
 化学的な刺激に応答して発芽するという特性、および、いったん発芽すると貯蔵養分を使い尽くすまでに寄生しなければ死ぬ(自殺発芽)という根寄生雑草の最大の弱点に着目して防除の方策を見出そうという点に、本研究の最たる特徴があります。

3.内容
(1) 効果的に自殺発芽を誘導するために、化学的に不安定な発芽刺激物質を安定に保ち、水分の存在 下で徐々に放出する製剤の検討を進めています(特許出願)。 
(2) 発芽刺激物質を多量に生産する植物根培養系を確立し、生合成経路の解明に取り組んでいます。
(3) 根寄生植物の侵入に対する宿主植物の応答を解析し、宿主抵抗性の解明に取り組んでいます。

4.研究の適用分野
 根寄生雑草は昆虫、鳥、病原菌を上回り、アフリカの食糧生産を脅かす最大の生物的要因となっています。さらに、根寄生雑草に侵入された畑は長期にわたり宿主となる作物を栽培できなくなるので耕地が放棄されています。したがって、根寄生雑草の防除は、食糧生産のみならず環境保全にとっても重要な課題です。また、寄生の成立する関係が限定的であることから、根寄生雑草を材料にして植物の自己、非自己認識機構の解明が期待されています。

研究者  杉本 幸裕
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

有機農業とは?作物による有機物の直接吸収作用

1.研究の概要とキーワード

環型社会の構築が求められています。大量の有機性廃棄物の堆肥化には、新たな付加価値をつける必要があります。土壌へ施用された有機物の効果に関して、これまでと異なる新たな効果について述べます。

2.他の研究との相違点・新規な点

作物の栄養に関して、Liebigの「無機栄養説」が支配されてきました。これと全く異なる植物の養分吸収機構が明らかになりました。この原理を用いると、土壌の窒素肥沃度の判定法、堆肥の施用法、化学肥料の施用方法、有機物の施用効果など、全て見直す必要があります。

3.内容

 土壌中に施用された有機物は、一度土壌微生物によって取り込まれますが、再び分解を受けて、分子量が8000の一定の形態を持つタンパク様窒素(PEON)になって、準安定な形で土壌に蓄積します。しかし、ある種の作物(チンゲンサイやホウレンソウなど)は、これを直接吸収利用できる能力(導管液の分析から証明された)があります。
 これが、作物の生育を促進させます。
 この原理が有機物の効果であり、これから作物の生産や品質への影響も考慮する必要があります。

4.研究の適用分野

 土壌診断、作物診断
 食品廃棄物

 

研究者  阿江 教治
神戸大学 農学部 生物環境制御学科
神戸大学連携創造本部より

環境保全型植栽資材の開発

1.研究の概要とキーワード

 ①工業化社会の発展は、環境汚染水質汚濁などの問題を引き起こし、
 ②食糧自給率の低下と輸入食品と家畜用飼料の増加は、食品廃棄物の増量を伴います。
 廃棄物の適正処理としてのリサイクル促進による循環型社会の構築としての「食のゼロエミッション」のため、食品廃棄物の作物栽培の有機資材として利用するには,“環境保全と食の安全”の立場から、「作物への有効性」とともに、「食料としての安全性」、「環境への負
荷の低減」を考慮しなければなりません。
 
 有機資材の土壌への投入

 1「安全なもの」:有害重金属、有害菌などを含まないこと。
 2「土壌の改善になるもの」:団粒形成や土壌微生物の活性化,減農薬に寄与する必要がある。
 3「施与による“健康な作物”のための効果」:硝酸が少なく利用可能な有機物を多く含むものである必要がある。
 以上の観点から,有効な環境保全型植栽資材の検討が必要になります。


2.内容

 従来から行われている堆肥の作成は,数ヶ月という期間を要するととも,場所をとる難点があります。経済的な問題から大規模集中化が必要となり,また,完熟堆肥では,硝酸など可溶な成分の流出,病原菌などの残余の危惧などの問題を抱えています。 
 しかし、多くの有機資材の中で、食品廃棄物を高圧、高温で処理した有機処理物(キヨモトバイオ(株)製処理装置による)が、「作物への有効性」、「食料としての安全性」、「環境への負荷の低減」の点で非常に有効であることが認められました。

 ○高温高圧処理有機処理物の特徴  
 ・5~10時間で廃棄物処理が可能で,迅速な処理ができます。
 ・高温高圧での処理で有害菌は死滅し,硝酸態窒素を含まれません。
 ・古い土壌の改良に特に有効です。
   即ち、古い土壌に処理すると、「糸状菌の増殖」、「土壌の団粒化の促進」等による土壌の改善効果が認められ,「保水性」及び「保肥力の増加」による硝酸流出の抑制効果が認められます。
 ・果実、野菜の成長促進、食味の増進が期待できます
   キヨモトバイオ(株)、(有)アグリサイエンスによって日本各地での食味向上への有効性が認められています。
 

3.他の研究との相違点・新規な点

 本有機処理物はリサイクルを通じた土づくりの有効な資材であり,使用により持続可能な循環が可能となります。地域での循環利用は、「地産地消の基礎」となり、地域の特色の発揮を可能とします。都会における家庭園芸での古土再生循環使用にも有効です。

4.研究の適用分野

 「食のゼロエミッション」として、食品会社、食品スーパーの食品廃棄物、漁村における魚処理廃棄物の資材化、農家と近郊住宅をつなぐ地域循環への利用が可能となり、廃棄物の内容(魚あら,豆腐かす,生ゴミなど)による効果の違いから、それぞれに有効な利用法が考えられます。

研究者  安田 武司 
神戸大学 農学部 生物環境制御学科
神戸大学連携創造本部より

酒米のルーツと酒造好適性遺伝子を探る

1.研究の概要とキーワード

<研究概容>
酒米はお酒の醸造に適した性質を持つイネ品種群です。
    
本研究では・・・・・
 1)酒米はどのような歴史を辿ってきたのか、DNAに残された「進化の足跡」を基に考える
 2)酒米がもつ優れた酒造適性がどのような遺伝子に支配されているのか遺伝子のレベ
   ルからさぐる
                        という二つの点について解析をすすめています。

<キーワード>
酒米、酒造好適性、遺伝的多様性、分子マーカー、DNAフィンガープリンティング、
SAGE法 (Serial Analysis of Gene Expression)、遺伝子


2.他の研究との相違点・新規な点

1)DNAを直接比較することによって、酒米のルーツがどうやら関西にあるらしい
という興味深い事実を発見しました。
   2)多くの酒米品種と食用米品種を比較することによって、酒造上すぐれた
    遺伝子が染色体上のどこに存在するのか明らかにしました。
   3)SAGE法( Serial Analysis of Gene Expression)という全く新しい方法によって、米粒
    において働いている遺伝子を網羅的に解析することに成功しました。


3.内容

  日本酒はでんぷんの麹菌による糖化と酵母によるアルコール発酵という二つの過程を
並行的に行う世界でも例を見ないすぐれた醸造技術の結晶です。

 このような日本酒の醸造に用いるイネ(酒米)はできあがる酒の品質に大きな影響を及ぼすため、人々は古来、良い「酒米」品種の選抜に関心を寄せてきたと考えられます。現在我が国各地に伝わる「酒米」はこうした先人たちが選び育成した品種であると考えられますが、これらがどこでどの様にして起源したのかのか、また、良い酒米がどの様なすぐれた遺伝
子を持っているのか定かではありません。
 
 そこで本研究ではまず、酒米のルーツを探るため、日本各地の酒米についてDNAのちがい(DNAフィンガープリント)を比較しました。その結果、酒米の遺伝的は変異は食用米に比べて小さいこと、また現在各地に見られる酒米の在来品種は、関西地方の食用米にその
ルーツを持つらしいということが明らかになりました。
 
 現在、酒米酒米たらしめている遺伝子を見つけだすため、SAGE法 (Serial Analysis of Gene Expression)という全く新しい分子遺伝学的方法によって、酒米に特徴的な遺伝子を探索しています。


4.研究の適用分野

DNAを用いた酒米品種の識別や「山田錦」を越える新しい酒造好適米の育成の基礎となる研究


研究者  森 直樹・中村 千春
神戸大学 農学部 生物環境制御学科
神戸大学連携創造本部より

酵素反応を利用する高効率的光学分割

1.研究の概要とキーワード

 酵素として、安価で入手容易なリパーゼエステラーゼを用いた酵素反応を工夫すること
により、不斉炭素を有する医薬や農薬などの重要中間体を高効率的に光学分割(右手型と左手型化合物に分離すること)が可能となります。
(特許出願済1996-70886, 1999-46793)


2.他の研究との相違点・新規な点

酵素を用いた効率的光学分割の一般的手法は、目的とする化合物に最適な酵素をスクリーニングにより見出すことです。しかし、この手法は膨大な時間と手間を必要とし、酵素の利用範囲を制限しています。私達は、スクリーニングによらない市販の酵素の機能を改変し、目的化合物に対して最適化させ、高効率的光学分割が可能な戦略を確立しています。

(1)金属イオンやSDS などを、酵素反応系に添加し、酵素のフレキシビリティを高める。
(2)イオン性化合物を、酵素表面にコーティングし、酵素の表面電荷バランスを変えること
  により、酵素の機能改変を行う。
(3)酵素表面を化学修飾(ベンゼン分子などを結合させる)することにより、酵素の機能改
  変を行う。
(4)化学修飾酵素を一度変性させて、次に酵素を巻き戻すことにより、新しい構造の酵素を
  作り出す。

 以上の手法により、色々な立体構造の化合物が酵素内に取り込まれ、高効率的光学分
割が可能となります。

3.内容

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4.研究の適用分野

 酵素機能を、上記の簡便な手法により改変させることで、光学分割以外の分野への応用が期待されます。例えば、分子と分子を結合させるアルドール縮合などが可能になります

研究者  上地 眞一
神戸大学 発達科学部 人間環境学科 
神戸大学連携創造本部より

生物の酵素機能を利用した新しい創薬支援法

1.研究の概要とキーワード

 急速なゲノムプロジェクトの進展により、新たな創薬のターゲットとなりうる酵素レセプターなどの生体関連物質が明らかにされつつあります。

現在の創薬では、これら生体関連物質と低分子化合物(分子量500以下)の相互作用を調べるランダムスクリーニングが基本的な手法となっています。しかし、ランダムスクリーニングに適応できる化合物の有機化学合成はコスト面などの観点から限界が見え始めており、近い将来には新薬の開発に重大な支障が生じると考えられています。そこで本シーズでは、広く生物界に分布するチトクロームP450(P450)糖転移酵素などのバイオの力をもちい、ランダムスクリーニングに用いる低分子化合物のバリエーションを飛躍的に増加させる技術を提案します。

2.他の研究との相違点・新規な点

 骨粗鬆症薬の有効成分であるCalcitriolはコレステロールを出発化合物として17段階にもわたる化学反応を経て合成されていましたが、現在では放線菌のP450によりビタミンD3からわずか一段階で合成されています。この結果は、従来より化合物合成の難題であった水酸化反応がP450を利用することによりに低コストかつ迅速に行えることを示しており、この点に着目したのが本研究の最も重要な点です。

3.内容

 P450は、ヒト、哺乳動物、昆虫、植物、微生物などの生物界に広く分布している酸化酵素です。例えばヒトでは57種、モデル植物のシロイヌナズナでは273種もの遺伝子が知られています。さらに各P450分子種は、わすか1酵素でも多様な基質と反応できることから、P450全体では代謝不可能な生体関連物質は無いとまでいわれています。いいかえれば、私達の目的に合致した生物材料には無限の可能性があるといえるでしょう。ただ、いくら良い研究材料があっても、有効に利用しなければ宝の持ち腐れです。そこで、本シーズではこれらP450を大腸菌へ安定に発現させる系を開発し、その代謝機能による低分子化合物ライブラリーの変換方法の実施基盤を確立しました。

生物の酵素機能を利用した新しい創薬支援法


4.研究の適用分野

 高等生物には微生物と比較して圧倒的に多くの膜結合型P450が存在しますが、現在までこれらP450の大腸菌内での発現は困難でした。そこで本法を用いることにより、医薬品化合物の改良創薬スクリーニングのための化合物ライブラリー作製などが、飛躍的に効率化できると期待されます。


研究者  今石 浩正
神戸大学 遺伝子実験センター
神戸大学連携創造本部より

歩き方はあなた自身を語る -歩行は利用価値の高い「情報」の宝庫-


1.研究の概要とキーワード

 多くの有用な情報を含むヒト・動物の行動を客観的に定量化する方法・技術と解析方法の研究を行っています。

2.他の研究との相違点・新規な点

 行動は脳の最終出力でもあります。行動の理解は脳を知ることにもつながります。
ヒト・動物の行動には、多くの有用な情報を含んでいますが、データを獲得する方法・理論・解析技術などはまだ確立されていません。行動を定量化することで、多くの科学的発見が期待できるだけでなく、その情報を広く社会に応用することで、社会貢献やビジネスチャンスが生まれてくる可能性が高い。まさに、「行動解析ビジネス」という新しい分野の創世を期待しながら、研究をすすめていく中で、行動情報の重要性や定量・解析技術の応用によるマーケティング情報の収集、産業心理学の実践、ヒトの福祉、動物の福祉の発展に寄与したいと考えています。

行動解析による情報はヒト・動物を問わず、科学的にも、ビジネスの分野でも大変利用価値の高い情報です。行動情報を客観的に、正確に、そしていかにわかりやすく表現するかが重要です。行動の情報化に関する研究は、新規性があり、今後いろんな学問分野の有用な分析情報として活用されると期待しています。


3.内容

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技術的な要素をクリアーできれば、我々のシーズは「行動情報」を必要としている全ての分野に応用できると考えています。「行動」の質・量ともに定量化することで「行動の数値化」が可能となります。

数値」として、「情報」として行動が扱えるようになる事は、いままで曖昧だった行動の評価の精度を上げ、必要とする分野の迅速な情報伝達を可能にします。

つまり、いままで不可能であった薬物の最終的な効能について、定量的な行動量として評価できること、転倒する可能性が高いヒトを事故前にスクリーニングし、リハビリテーションの評価、BSE感染牛の異常行動の検出などを可能にします。電子データとして保存できる「行動データ」は、後々の検証、スクリーニング、生産履歴など利用価値の高いデータとして活用できます。


4.研究の適用分野

 適用分野は医療・獣医畜産・製薬だけでなく、製造業・マーケティング・コンサルテーションなどでも利用できると考えています。多くの中小企業と汗をながしながら、新しいビジネスの創造をお手伝いしたいと考えています。


研究者  千田 廉
神戸大学 農学部 応用動物学科
神戸大学連携創造本部より

味・においセンサーを用いた牛肉の熟成過程の評価と解析

1.研究の概要とキーワード

 牛肉の食べ頃を科学的に測定・判定することは現在のところ困難です。こんなに科学が進んでいるのに何故でしょうか?

それは、牛肉の熟成過程における変化が非常に多くの複雑な要因を含んでいるからです。
それらの要因とは、「軟らかさ」、「多汁性」、「」、「香り」、「色調」などが挙げられます。軟らかさ多汁性色調の研究はかなり進んでいますが、香りの研究は、測定、客観的評価が難しいことからなかなか進んでいません。

そこで、香りの測定を、開発された味・においセンサーを利用した機器を用いて測定し、私達が食べている感じ(官能検査)と比較しながら、牛肉の熟成過程における風味の変化を明らかにし、牛肉の美味しさをわかり易く消費者の皆様にお伝えすることを目指して研究をしています。

2.他の研究との相違点・新規な点

 味の評価は、これまで官能検査が主流でした。これらの評価を人間の感覚で客観的に測定する機器として[味認識装置]が開発されました。

これまで、ビール、お茶、牛肉の品種の違いなどの味の測定に利用されています。一方、香りの評価は味の測定より、より困難なようです。それは、香りの測定の基準(物差し)がないからです。この香りの評価を、人間の感覚で評価する目的で[島津におい識別装置]が開発されています。これらの機器を有効に利用した牛肉の熟成に関するデータはまだほとんどありません。これらの機器の良さを発揮させる条件下で、牛肉試料を測定し、得られた結果と、人が感じる味と香りの結果の相関関係を解析します。それらの結果から、牛肉の熟成過程における風味の変化を明らかにします。牛肉の食べ頃を科学的に示せたら、消費者の皆様は牛肉をこれまで以上に美味しく・楽しく食べられるでしょう。

3.内容
 現在、牛肉内腿部位(和牛、約5,000円/kg)を試料として、と畜後7、14、21、28日目に試料の調製を行っています。味、香りの試料は生試料、加熱処理(プレート加熱、湯漬け加熱)です。味の試料は、牛肉に水を加えミキサーでドロドロにして、遠心分離で得られた上清です。香りの試料は、薄切り肉そのままです。下記の結果の通り、熟成28日目では、7、14、21日目と少し違うパターンが得られています。

においと味のパターン

4. 研究の適用分野

 この研究そのものは、食品分野、特に食肉の科学への適用になります。
ここで用いている手段である測定機器は、これから益々食品分野で威力を発揮していく可能性があります。消費者の方々にもっと牛肉の奥の深さを知って頂き、牛肉を食べて明日への英気を養ってもらうことが期待されます。

研究者  岡山 高秀・岩崎 将志
神戸大学 農学部 生物機能化学科
神戸大学連携創造本部より

哺乳類における雄性生殖能力簡易判定法の開発

1.研究の概要とキーワード

 精液性状は良好であるが,精液を雌に人工授精しても受胎しない雄家畜個体(原因不明の雄性不妊症)が最近多く発見されています。この雄性不妊症は従来の精液性状検査法では検出不可能であり,新規の不妊症診断法の開発が各地の農業試験場や畜産農場から求められています。また,この雄性不妊症は家畜の系統の維持を脅かす深刻な問題であります。私たちは,精子の受精能力発現機能分子の動態解析に基づく哺乳類雄個体の生殖能力簡易的判定法の開発を目指して研究をしています。

2.他の研究との相違点・新規な点

 通常の方法では精液一般性状(液量,精子濃度,精子活力,pH,精子耐凍能)を検査して雄性生殖能力を判定していますが,近年,和牛(黒毛和種)において頻発している不妊症はこの判定法では検出不可能なタイプです。

現在,農業試験場では雌個体への精液の人工授精による体内受精判定法により対応していますが,この方法には多大の労力と経費を要することから,多頭数の雄個体に対して繰返し実施するのは困難であるという欠点があります。

本研究で開発する判定法では精子の細胞内機能分子および精漿の生殖能力マーカータンパク質を直接解析することで雄性生殖能力を検査するので,動物個体そのものを必要とせず,これにより労力と経費を大幅に削減できます。
また判定に要する日数も1~2日間で,従来法の1週間~3ヵ月間に比べて期間を大幅に短縮できます。

3.内容

 精漿中に含まれている雄性生殖能力マーカータンパク質の特性解析とその簡易検出法の開発をすでに完了させています(対象動物種:ウシ) 。
また雄性生殖能力マーカーとなる精子リン酸化タンパク質(受精能力発現機能分子)の特定を進め,数種類の候補タンパク質を見出しており現在はその有効性を証明する実験を進めています(対象動物種:ウシとブタ,今後は哺乳類全般に応用する予定)。

下の図は生殖能力マーカー候補のウシ精子リン酸化タンパク質の検出像とデンシトメータ画像解析の結果です。

精子リン酸タンパク質の<br />
   検出と量的解析<br />

4.研究の適用分野

 この研究そのものは、農業・畜産分野への適用となります。
 ここで示した雄性生殖能力簡易判定法のうち,精子リン酸化タンパク質のELISA解析による不妊症診断法は原理的にヒトを含めた哺乳類全般に応用可能と考えられるので,ヒト男性不妊症診断用医療器具としての医学分野での有用性が期待できます。

研究者 原山 洋 
神戸大学 自然科学研究科
神戸大学連携創造本部より

医療および実験用の多産性ミニブタ系統の造成

1.研究の概要とキーワード

 ミニブタは、心臓血管系や消化器系などがヒトとの高い類似性を示すことから、医学用実験動物代替臓器提供ドナー動物として、非常に注目されています。

しかし、現存の系統は、産子数が少なく(リッターサイズが4〜5頭)量産が困難なため、高価で入手が難しいという欠点があります。そこで、医療および実験用のミニブタの効率的な安定供給を目的として、多産性系統の新造成に関する研究を行っています。

2.他の研究との相違点・新規な点

  現在、国内には、後述のクラウンミニを含めて、欧米品種などいくつかの系統が存在しますが、本研究では、多産と早熟で有名な中国在来種の梅山豚を育種素材に利用して、新しい系統を造成しました。 
 
3.内容

 神戸大学農学部は、株式会社ダイエーとの共同研究で、1987年に他に先んじて、中華人民共和国から梅山豚を導入し、その品種特性ならびに肉用家畜としての有用性についての研究を行ってきました。
そしてその結果、梅山豚は超多産性(リッターサイズが最高20頭)や早熟性(春機発動が約3ヶ月齢)など欧米改良種にはない優れた繁殖性能を有することなどが明らかとなりました。

しかし、欧米改良種に比べて増体が遅いうえ、枝肉の歩留りも悪く(皮下脂肪が多く、赤肉の割合が少ない)、そのうえ枝肉単価も安く、これらの市場評価から見て、梅山豚の肉用家畜としての商品価値はかなり低いとの結論に達しました。そこで私は1995年度から、梅山豚の利用方法を育種素材に切り換え、梅山豚の多産性を有するミニブタ系統の造成に関する研究を始めました。父系には、鹿児島県で系統造成されたクラウンミニを用い、その精液を導入して人工授精で梅山豚との交雑種を作出し、これらの体型や繁殖性能、血液性状などについて詳細な研究を行っています。

 こうして造成されたミニブタ系統は、1998年1月に、(社)実験動物協会、小型ブタ性能調査検討会が実施した「岡山・神戸地区実験用小型ブタの生産・利用に関する実態調査」の結果、「雑種第一代の外貌については、頭部と体部のバランスがよく、背線が真っ直ぐであり、繁殖性もよく、耳が大きい等の優れた特徴を持っていると思われた」、「供給価格の低減には生産性の向上が必要であり、繁殖性の高い小型ブタ系統の造成が必要と考えられます。この意味で、神戸大の梅山豚とクラウンミニの交雑は、バランスのとれた体型で、耳も大きく、繁殖性なども優れているように思えました。

ミニブタ


今後の雑種第二代以降の造成に期待がもてる」(実験用小型ブタの開発、実験用小型ブタ導入・性能調査事業報告書、平成12年3月、(社)日本実験動物協会、50頁)との高い評価を得ました。  
本研究は、兵庫県(県立農林水産技術総合センター家畜部)の次期中期事業の新たな課題としても考えられており、今後は、県との共同研究として規模を拡大し、進めてゆく予定ともなっています。


4.研究の適用分野
 本研究の適用分野としては、基礎医学再生医療臓器移植などが主なものとして考えられ、研究成果(ミニブタ)の供給先としては、医療産業都市構想の一環として、神戸市がポートアイランド第2期に建設中のバイオメディカル開発センターなどを予定しています。また現在私は、(社)実験動物協会の高品質実験動物生産体制確立推進事業のミニ豚等普及促進企画検討小委員会の委員を委嘱されており、医学分野以外の利用に関しても鋭意模索中です。

研究者 楠 比呂志
神戸大学 農学部 応用動物学科
神戸大学連携創造本部より

産業動物におけるストレスと肥満

1.研究の概要とキーワード

 先進諸国のヒトと同様、産業動物も豊富な栄養条件とストレスの中に生きています。
そして、ストレスによる過食や血中ホルモンバランスの変動はストレス性肥満を引き起こすとされています。

このストレス性肥満は、ヒトにおいては健康維持の面で、産業動物においては健康維持と飼料エネルギー浪費の面で、それぞれ解決すべき課題となっています。我々は、機能性飼料を用いた産業動物のストレス性肥満抑制法の開発と、ヒトのストレス性肥満抑制法の開発へのその応用の可能性について検討しています。

2.他の研究との相違点・新規な点

  ヒトにおいては、化学薬剤(医薬品)を用いた肥満抑制に関する研究が進められていますが、副作用の問題等から広く利用されるものとはなりません。

又、食品(特定保健用食品等)を用いた肥満抑制に関する研究は、腸管からの脂肪の吸収抑制や体脂肪の分解促進に基づくものが殆んどで、いずれも摂取エネルギーの浪費に繋がることから、畜産物の生産に利用できるものとはなりません。そして、“ストレス緩和に基づく肥満抑制法”に関する報告は、国内外において皆無であることから、本研究は他に類を見ない極めて独創的な研究として位置付けられます。

3.内容

産業動物におけるストレスと肥満

 飼料原料の殆どを輸入に依存している我が国では、飼料の浪費は畜産物の生産コストの上昇に直結します。
そのため、効率的な家畜生産を目的とした飼育管理が行なわれているが、種々のストレスや運動不足は飼料エネルギーの浪費ともいえる体脂肪の過剰蓄積を引き起こしています。

又、近年、ペットにおいても、ペットフードのグルメ化による栄養過多と運動不足による肥満の増加が問題となっています。ここで、ストレス反応とは生体の恒常性維持をおびやかす外部要因(ストレッサー)に対して生体が示す防衛反応をいうが、多くの動物種において、種々のストレッサーによる刺激は副腎皮質ホルモン(GC)の分泌を促す点で一致しています。

 そして、血中GC濃度の上昇は、内臓脂肪量の増加を引き起こすことが知られており、ストレス性肥満発症に深く関与するとされています。

 我々は、肥満抑制作用を有する飼料素材を探索する過程において、いくつかの飼料素材中に血中GC濃度の低下に基づき肥満を抑制する因子が存在することを推察しました。そこで、この肥満抑制因子を特定し、これを用いた“ストレス緩和に基づく肥満抑制法”の開発を進めています。


4.研究の適用分野

  安全な飼料素材から抽出した機能性因子を用いること、ヒトと産業動物の間で肥満の発症の成因(ストレス、栄養過多、及び運動不足等)が極めて類似していることから、本研究によって確立される肥満抑制法は、飼料、食品、更には医薬品として、広く応用される可能性が高く、これらの分野において、産学連携による研究が可能であると考えています。

研究者 本田 和久
神戸大学 農学部 応用動物学科
神戸大学連携創造本部より

偽装表示とおいしい牛肉を遺伝子で見抜く!

1.研究の概要とキーワード

近年、農産物の偽装表示が騒がれるようになりました。
我々は牛肉の偽装販売を防ぐ目的で、国産牛肉の黒毛和種ホルスタイン種、その交雑種の違いをDNAで見分ける方法を開発しました。また、牛肉のおいしさ及び人にとって健康志向の牛肉に関わる遺伝子を発見し、DNAを用いた牛肉の評価法や牛の改良に貢献する方法を開発しました。

2.他の研究との相違点・新規な点

 牛肉の偽装を見抜く有効な技術はこれまで存在しなかったが、開発した方法により偽装表示の抑止が可能となりました。また、牛においては味と関連する遺伝子はこれまで見つかっていなかったが、その遺伝子と突然変異を明らかにしたことにより、DNAを用いた新しい牛の育種や牛肉の評価法を構築する糸口を提供することになりました。

3.内容

偽装表示とおいしい牛肉を遺伝子で見抜く!

その結果、

・品種鑑定のためには、品種の違いを示すDNA領域を6ヶ所発見し・味や健康に関連する遺伝子としては、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に変化させるStearoyl-CoA desaturase(SCD)遺伝子内での突然変異が影響することを明らかにし、これらを用いて牛肉の品種鑑定やおいしくて健康志向の牛肉をDNAで鑑定する方法を開発しました。

4.研究の適用分野

 現在、国産牛肉と輸入牛を見分けるDNA鑑定法を開発中です。また、高品質牛肉に関係する遺伝子に関しては、その他の遺伝子も調査中です。共同研究や開発した方法を実際に使ってみたい方がおられましたら、ご相談ください。                   

研究者 万年 英之
神戸大学 農学部 応用動物学科
神戸大学連携創造本部より